プレゼント
璃子が向かった店は大手メーカーの店ではなく、個人が経営しているような小さなお店ばかりだった。
本人曰く、女の子はたいてい大きな店はチェックしているとか…
オタクなのに友達とうまく接している璃子はそういう事情に詳しい。
女友達がいない俺にとってこういう外とのつながりがある友人は非常に助かる。
情報源はここにしかないからな。戦後の闇市みたいな感じだ。
ひと通り回って、最後に決めようという事になっていた。
気になったものは今のところなかった。璃子にはなんだか申し訳ない。
「どの店もセンスがいい店ばっかなんだけど、なんかあいつにしっくりこないっていうか…」
「ピンとこないんでしょ。わかってるよ。顔に変化がないもの。」
お気づきでしたか。さすが、成績優秀な方です。
その後もピンとするものはなく、いよいよ最後の店になったらしい。
そこは、雑貨屋さんだった。お土産屋さんみたいで和的なものなどがあった。
やっぱりピンとくるものはない。そう思って店を出た。
その店の目の前。
これだ‼
というものがあった。
月曜日
結局。
春波には、タイミングが悪くて渡す暇がなかった。
実際は昼に渡せたのだが、恥ずかしくて渡せなかった。
放課後になってしまった。
今日も友達がいないから…と、一緒に帰られることになって幸運だった。
「今日も昼飯おいしかったぞ。」
「ほんと?今日のは手ごたえあったんだよ‼」
ガッツポーズをしたと思ったら、すぐに力こぶを作るポーズをして自信ありげな顔をする。
忙しい奴だ。
たしかに最近、春波の料理はどんどんおいしくなってる。
きっと俺のために努力しているんだろう。
そう考えるとすごく幸せなことなんだな。
「実はさ、春波に渡したいものがあるんだ。」
「え?」
「これ、日ごろの感謝のしるし」
「う‥そ‥」
めちゃくちゃ驚いた顔をして、何度もプレゼントと俺を見る。
状況を飲み込んだのか、プレゼントを受け取ると
「開けてもいい?」
すぐにごそごそと袋を開けた。
「これ‥」
俺が選んだのはブレスレットだった。
ピンクと水色の編み込みが施されていたので、髪の毛と制服にとても似合うと思ったのだ。
「かわいい~。ありがとう‼」
目をキラキラさせてまじまじと見てくれている。
すげーうれしい。
「つけてみてもいい?」
「もちろん」
案の定、俺の予想通りすごく似合っていた。
「ほんとにありがとう‼大切にするね!」
すごくうれしそうで何よりだ。相変わらずまぶしい笑顔だ。
どう?似合う?といった感じでポーズを決めてくる。
「感謝するのは俺の方だ。いつもお弁当を作ってくれてありがとうな。」
俺の顔が赤くなっているのがわかる。でも、それ以上に春波の顔が赤かった。
ポーズをするのをやめた彼女は
体をもじもじとよじらせ、目をきょろきょろさせながら。
「いいの‥、やりたくてやってるから。あなたを落とすために‥ね」
そのままかけていってしまった。
喜んで行ってくれてうれしかった。
あの後、璃子には「私いらなかったじゃない」なんて言われた。
そして、俺はもっと春波のことを知ろう。そう心に誓っていた。
閲覧しくださいまして、誠にありがとうございます。
僕自身鬱な展開があまり好きではないので、明るい内容になるように考えてきましたが、とうとう鬱展開になる予感がします。でも、そのあとには急展開が待っているので、期待してみてください。
新米ながら生意気なことを言ってしましたが、よろしくお願いします。
次の話から冬になります。