第6話:式神の能力
「神族やらは置いといて、色々と大丈夫なんですか?」
「妾を舐めるでないぞ、きっと式神君1号がお主の代わりにしっかりとやってくれとるはずじゃ!どれ、ちと下界を見せてやろうかのう」
九尾ちゃんがおもむろに布団から抜け出すと、テレビのような物を持ってくる。不可解なのは床に貫通している線が繋がっている事だが、それよりも九尾ちゃんの持つお山さんの方が気になる。
いやいや、落ち着け。こんなことで機嫌を損ねて下界を見せてくれなくなったら、それこそ解雇の危険性マックスだ。お山は後で愛でれば良い。
「はぁ、お主は本当に困った奴じゃのう。殿方からの下卑た視線は案外わかりやすいから、気づいておるぞ」
「わあっ、すいません。真面目に見るので、仕舞わないで下さい!」
軽く睨んだ後、溜め息を吐いて九尾ちゃんはモニターを点けてくれた。
ぼやっとした白黒の画面がしばらく続いた後、徐々に鮮明な画面が浮かんでくる。そこに映るのは確かに俺の職場であり、パソコンを叩いているのは確かに"俺"だった。
「すっごいですね、俺がいますよ!これが九尾ちゃんの言う式神ですか?」
「ええい、煩い!黙っておれ、音の調節が出来ぬでは無いか。ええと確かこうして……」
九尾ちゃんの言葉で口を閉じる。どうやら細かい微調整が必要みたいで、ああでもない、こうでもないと機械を弄ってる。案外、機械音痴なのかもしれない。
『……して納期までにお願いしていた仕事の件だが』
『かしこまりました』
『わかっているなら、良いがこれは我が社が3年間かけて仕上げてる企画だから、しっかりやってくれよ』
『かしこまりました』
『君もまだ若いが、まだまだやって貰いたい仕事は沢山あるからな。少し目処がついたらこちらに来るように』
『かしこまりました』
…………ん?何かおかしくないか?これ?
その後、しばらく働いている式神君を観察していたが、確かにパソコンでのスペック、見積書、計画書等の書類の書き方も問題なく出来てる。
しかし致命的に残念な所がいくつかある。
「九尾ちゃん、式神君。まともに喋らないんだけど」
「……むぅ、文字は読み上げるが日常会話できなくてのう。いくつか単語は覚えさせたが……」
「……ちなみに何を覚えているんですか?」
「"おはようございます"と"お疲れさまです"と"かしこまりました"と"契約してください"の四つの言葉じゃな」
「……っ!?」
九尾ちゃんのあまりの言葉に絶句する。いや、色々と駄目だろこれ……。
「表情も無いんですが……」
「式神じゃ、当たり前じゃろ?」
「当たり前じゃろじゃないっすよ!ひたすら同じ事を繰り返してヤバいロボットみたいじゃないですか!?ほら……周りも怯えて…………いやいつも通りですね」
パソコンを無表情で叩く式神君の周囲の反応は今までと殆んど変わらなく、何だかやるせない気持ちになった。




