第5話:仕事?
九尾ちゃんの尻尾がフリフリと動くのを眼で追いながら、妖怪について考える。
人の記憶に残る存在かあ、小さいときは怖い話やら未知なるものに対して、怯えや恐怖、興味があった。
いつからか、あり得ないだろと思って生きてきたけど。目の前に広がっている光景はそんな自分の常識を粉々に砕くような光景だ。
「所で、妾がお主を呼んだのには理由があってな。少し仕事を頼みた「仕事っっ!」なんじゃ、突然」
九尾ちゃんの仕事という言葉に慌てて立ち上がる。仕事、納期、会議、やり残し、遅刻……。
「待ってください!今何時ですか?時計、あれ?ない……、携帯……あれ背広は?」
「落ち着くのじゃ、そないに忙しなくうろうろされても、録に話も出来ぬではないか。安心せい!お主の仕事の"あふたーさーびす"とやらもしっかりとやっておるから」
九尾ちゃんに押さえられて座らされる。押さえられただけで、ふわりと花のような香りがして妙に心が安らぐ。
頭の中で遅刻、責任、解雇とネガティブワードがメリーゴーランドの様に回っているが、九尾ちゃんの言う舌足らずなアフターサービスが気になった。
「アフターサービスって何ですか?九尾ちゃんが何かやったんですか?」
「九尾ちゃんって……、むぅ妾は偉いのにのう。大丈夫じゃ、お主の言う仕事は神族から借りた式神が代行して行っておる。式神は役に立つぞ、何せお主の記憶を読み取ってお主のように動いてくれるからの、……まぁ、上手く喋れないのが問題じゃが」
「ま、待ってください!いきなり情報が勢いよく増えてきて対処できません!それに安心できない言葉がぼそっと出てきたんですけど!」
神族やら式神やら、聞きなれない言葉が出てくる。全然安心出来ないが、どうやら今すぐに此処から出て仕事に行かなくちゃならない訳ではないらしい。




