第1話:表裏一体の世界へようこそ
現世からチート持ちとして勇者になったフリーターはその国の王の姫様と結婚して国王として現代知識を発揮して国の文化水準を大きくあげました。
いやいや、考えたものが実現するチート持ちとか、どんなご都合主義だよ。
「異世界か……、もし俺も異世界に行けるなら行きたいよ……」
異世界冒険もの携帯小説を区切りの良いところまで読んでから、本を閉じる。上司のクレーム処理で残業してげっそりした自分としては異世界の勇者様とやらがキラキラした存在に見えてならない。
現実とのギャップ差に帰りの電車で溜め息を吐く。
冴えない表情のサラリーマンの男が窓に映る。最近残業が増えたせいか、目の隈が目立つ冴えない表情の冴えないサラリーマン。
ひっどい面してる、最近仕事忙しかったからなあ。
周りを見ると電車の広告で先ほど読んだ携帯小説がアニメ化するとあった。どうやら魔法使いやら、魔王やら出る王道小説らしい。
魔法使いかあ、最近はあっちこっちでサブカルチャーで見ること多くなったよな
俺は小さいときから魔法使いやら、妖怪、幽霊、超能力、未来人、宇宙人とか現実に無いものの小説を読むのが大好きだった。
実際にはいないとわかってる。だけど大学の頃に月に1回曰く付きスポットをネットで集まったメンバーで探索するのはまだ見えないものに会いたいからだろう。結局、未だに幽霊とも遭遇してないけれど。
仕事は3年目に突入してそれなりに責任ある仕事を任されたり、充実しているんだけど、何だか物足りない。
無双してハーレム作って大金持ちになって、そんな欲求を満たしてくれないかなと黙々と携帯小説を読み続ける。意外に面白くてのめり込むように読んでいた。
「次は終点の荒屋、荒屋です。御出口は右側です」
しまった、終点まで来てしまった。そう後悔するも電車が戻るはずもなく最後まで乗るしかない。
終電で終点に行ってしまったからか、他の乗客の姿はない。タクシー捕まえるしか無いけど、予想外の出費に泣きそうになる。昼食代を削って給料まで持たせるしかないか。
直に目的地にも着くし座っていても仕方ないと立ち上がると、身体を伸ばして凝りをとる。普段は他の人がいるときは出来ないけど、周りにいないなら問題ないはずだ。
出入口の前に立つとウズウズと好奇心に惹かれる。そういえば、さっきまで読んでいた携帯小説が異世界に行ったのは、鏡に触れて行ったと書いてあった。
そんなことあるはず無い、そう思いながら鏡にもたれるように触れると前につんのめる感覚と共に身体が前に倒れていく。
"ヤバい倒れる"と思わず恐怖で目を閉じると、そのまま意識を失っていた。