表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
8章 罪は私を緋色に染めて
94/292

93話 罪は私を緋色に染めて16

 私の歯が豊の手首に食い込んでいく。

「星華ちゃん、痛いよ……」

「豊がそうしてって言ったんでしょ、大丈夫、大怪我はさせないから」

一旦口を離してそう言うと再び手首を咥える。

少し皮が切れて血が滲んできた所で力を弱め、血が流れ出すその傷を舐める。

「……ピリピリする」

恐らく私の唾液が染みて居るのだろうが、塩水よりはマシだろうし、唾液には殺菌作用があるから大丈夫だろう。

……それにしても、血が甘く感じる。

今までは不味いとは思ってないが、別にそこまで美味しいとは思って居なかった……多分。

だが今はどうだ、糖蜜よりも甘く、そして体に染み渡るようだ。

恐らくは私の体が変化してきている証拠なのだろう、より鬼に近い者へと……それが進化なのか、それとも本来の状態に戻ろうとしているのかは分からない、記憶が無いのだから当然ではあるが。

それでも、この味をここまで愛しく感じるのは相手が豊だからなのだろう、この行為によって嫌われるかもしれないと思っても止める事が出来ない、そんな中毒性の様な物がある。


 「星華ちゃん、流石にそろそろ……」

「ああ、やりすぎちゃった、ごめんね」

そっと唇を離し、浅い傷口を撫でる。

「大丈夫?」

「あ、うん、この位の傷なら直ぐに治るせるし……」

そう言いながら豊は、魔術を使って傷の治療を行う。

「どうしたの?」

言葉の中に僅かな揺らぎを感じ、尋ねてみる。

「なんか、治すのがもったいない気がして」

「…………」

「あの、そんな目で見ないでよ」

仕方ないだろう、薄々築いていたけど豊は少々被虐嗜好がある。

チョーカーを贈ったりしたけど、それは豊に合わせた物だ……私の嗜好が入って無いとは言えないが。

それでもここまでとは思ってなかった。

噛まれて喜んでるようなら相当な物だと思う。

「まあ、別に問題ないか、私も大概だし」

その豊を噛む私もまた異常なのだから。


 そっと豊の頭を撫でて居ると、急に抱き着かれる。

「ん、なに?」

「なんか……こうしてないと、何処かに行っちゃいそうだから」

「……私は、どこにも行かないよ」

豊は元々孤独だった、それが私と一緒に居るようになり、それが普通になったから不安になるのだろう。

他に心を許せる相手が居ないから、それを失う事を異常に怖がる。

だから豊は私に支配されている証を欲しているのだろう。だから例えそれが痛みであったとしても、私の行為ならば豊は喜んで受け入れる。

一見変態に見えるが、それは寂しさの裏返しだ。

……だが、私もまた同じだ。

私には過去の思い出が無いが故に、豊以外から愛情を向けられた事が無い。そしてだからこそ、それを強く求めてしまう。

そして私は束縛する事でしかそれを求めれない。

アリーに対しては既に主従関係が成立しているからそれは出来ない。

豊も奴隷に対する権限があるが、そのほとんどは放棄している。

権限を放棄した理由はただ一つ……完全に全てを支配したら面白くないから。

対等に話をして、ふざけあって、時々暴走しそうになるのを止めて……そういった事が一切ない予定調和の世界はとても平和で……そして、とてもとても楽しくない世界だろう。

……だからこそ奴とはそのうち敵対するだろう。

そんな事は良い、要するに豊は私に束縛されたいと思い、私は束縛する事でしか本気で求める事が出来ない。普段は優しくしている事もあるが、そんな時でも色んな欲求が私の中でグルグルと回っている。

まあ、そんなのもまた楽しいのだけど。


 そっと抱き合っていると、静かなメロディーが流れだす。

「星華ちゃん、これは?」

「敵襲のアラーム、適当に設定いじって変えといた」

私は耳が良いから、あんまり煩いのは好きじゃない。

「敵は一体、取り敢えずスケルトンかな」

さっさと命令を出して、数十体のスケルトンを向かわせる。

命令を受けたスケルトンが侵入者に向かっていき……一瞬で全滅した。

「ちょっと待て、あの数を一撃で倒すって何者だ?」

ダンジョンメニューを開いてモニターを展開する。

「……ロボットだね」

「言われなくても分かってる」

そこに居たのは四つ足で、人と同じ形状の腕が二本、人に近い胴体に殆ど無いような首、顔の部分には大きなレンズが一つはめ込まれている……ロボット以外にそんな存在は居ないだろう。

青竜刀をそれぞれの手に一本持って居るが、スケルトンを倒したのはそれでは無いだろう。

何故なら散らばっているスケルトンの残骸のに私の死霊術が効かないからだ。

ダンジョン内なら効果がある事は検証済みだから、原因は一つ。

恐らくあれには浄化系統の魔術を仕込んである。

そんな物を創るのは神ぐらいだろう……神格を得た者かもしれないが。

それでも思い当たるのは一柱ひとはしらのみ。

今回はただの様子見だから遠慮は要らない。

邪魔をするのであれば潰すのみ。

さっさと破壊するとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ