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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
8章 罪は私を緋色に染めて
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91話 罪は私を緋色に染めて14

 「ん…………ん?」

意識を自分の体に戻し、目を開けるが、そこに見えた物を理解できなかった。

黒くて薄い何かが私をベットごと包み込んでいる。

寝ころんだまま、そっと手を伸ばして触れてみると、サラリとした絹の様な手触りがあり、それでいて丈夫な素材で出来ているようだ。

……もしかして、これって繭か?

その正体に予想が付き、その繭を手で破る。

手刀で真っ二つに眉を割って起き上がると、ダンジョンの部屋である事に変わりは無かったが色々と凄い事になって居た。


 「星華ちゃん、起きた~?」

私が寝てる間にダンジョンに来たのであろう豊が、そう言って部屋に入って来る。

「豊、動いちゃ駄目……もう遅いね」

私が起きている事を認識した豊が駆け寄って来て……部屋中に張り巡らされた不可視の糸に絡まって動けなくなった。

「……星華ちゃん、これなに?」

「多分私の瘴気が実体化したもの、実際は糸じゃなくて、極細の荊の蔦」

「全然痛くないけど?」

「それは今引っ込めたから」

この能力がなんの影響かは分からないが、何となく予想は付く。

「ああ……荊姫か」

「……言うな、結構恥ずかしんだよそれ」

「もっと言ってみよ……痛いよ」

ちょっとチクチクしてやった、直ぐに戻したけど。

「それだけ操作出来るなら早くほどいてよ」

「ん~そのままこっちに来ようか」

豊を拘束している荊を操作して私の居るベットまで運ぶ。


 「ちょっと星華ちゃん、何する気?」

少しの不安を含んだ声に何も答えず、そっと抱き寄せる。

そのまま首筋を甘噛みすると、豊は安心したようにその身を任せてくれる……どうして甘噛みで安心するのか謎ではあるけど。

軽く歯を立てたまま、舌を出して舐めてみる。

「あのさ、今日はお風呂まだだから汗臭いと思うよ」

「うん、ちょっとしょっぱいかな、でも豊が相手だし、私がやりたいから」

そう言うと直ぐに赤くなる豊……いつもながら分かりやすい反応だ、それが面白いのだが。

「……星華ちゃんがそうしたいって言うなら、私は何でも差し出すよ」

「それじゃあ、一緒に寝て、さっきまでも寝てた様なものだけど、実際は全く休めてないから」

そう言って荊から解放する。

そうして暫く抱いて居ると、腕の中から寝息が聞こえてくる。

……豊は結構無理する事が多いから、目の届く範囲ではこうやってなるべく休ませないと。


 ……安心して私の腕の中で寝息を立てている豊だが、彼女もまた強い狂気を抱えている。

それは『依存』、私が豊の為であれば何でもする以上に、豊は私の為にいかなる事でも平気で行う……それも、私が決してしない方法でもだ。

例えば私は友を傷付ける事をしないが、豊は私の為となれば、平気で友人を裏切り、傷付け、私に差し出す事すら厭わない。

だからこそ豊は絶対に信用できる。

奴隷に対する服従の権限を使ったとしても、相手の感情は縛れず、寝首を掻かれるかもしれない。

豊ならその心配は無い、心の底から私に依存し、服従している事を知っているから安心できる……そうでもなければ安心できない私が異常なだけでもあるのだが。


 豊の体を抱きしめるようにベットに入る……最近は冷えて来たし、私は基礎体温が低めだから、体温の高い豊は添い寝するのに丁度いい。

……少し疲れた、まだ力が馴染んで居ないのが原因だろうか。

ある程度なら操れるが、この荊が、夜の女神ニュクスの能力ではない事は確かだ、これは恐らく私が氷の領域を真に自分の物にした事による効果だと思う。

今は神格の力を馴染ませる為に、少し寝るとしよう。

そのまま、抱きしめた豊のぬくもりを感じながら、再び夢の中へと落ちて行った。

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