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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
8章 罪は私を緋色に染めて
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89話 罪は私を緋色に染めて12

 ……そっと目を開くと夜空の下の花畑のような場所だった。

ような、と言うのはその花が普通では無いからだ。

一見普通の花なのだが、よく見るとそれは造花で、だが、それにもかかわらずこの花は枯れては再生するを繰り返している。

そしてその再生を繰り返す度に、その花は前の花とは少し違う花になって居る。

花弁の形や、色、葉の葉脈まで一つとして同じものは無い。


 ……見て居て飽きる事は無いが、今回の目的は見物ではない。

それに第一、ここには来た事がある。

夢現の間にこの世界に入り込む事は何度もあった。

だからここでは無い、私が行かなければいけないのは、更に奥にある領域だ。

……その領域の存在については知っている、今まで見て見ないフリをしていたに過ぎない。


 そこに行く前にこの領域の本質を確認する。

ここに現れている私の狂気は『偽りの美』。

頭上に広がる夜空もよく見ればイルミネーションである事が分かる。

風も吹かず、鳥は機械仕掛け、蟲は存在すらしないこの場所にあるのは空虚のみ。

それが、私の狂気の一つという事だろう。

私はさほど偽っている訳では無い、それでも、秘めた思いを隠して振る舞う様は、他者から見れば美しくとも、己の目にはこれほどまで空しく見える物だと実感する。


 ……そろそろここに居続けるのは限界だ。

いつの日か、セイの時のようにこの場所も本当の美しさを湛えるようになれば良いとは思うが、今は無理そうだから、諦めて先へ進もう。


 何となくこっちだと思う方向へ進む、どうせこの世界には方向や、座標などという概念は無いからどっちへ行こうと何も変わらない、意思があれば扉は現れる。

そう考えて進むと一枚の鏡が浮かんでいた。

……あれが、扉か。

恐らくこの世界に入った時の媒体が鏡だからその影響を受けたのだろう。

その鏡は薄い青色の縦長の楕円形で、額縁には氷の結晶があしらわれて居る。

……冷たそうな鏡だな。

そう思いながら恐る恐る鏡面に触れてみると、手は簡単に鏡の中へと吸い込まれ、強烈な冷気を感じて思わず手を引っ込めてしまった。

……私にここへ入れと言うのか?

何となく次の領域に予想が付き、声が漏れる。

正直この先にある領域を自分の物だと受け入れる自信は無い。

この先にあるのは恐らく絶対零度の狂気。

全てを理解せず、感情を拒絶する事から生まれた狂気から出来た氷河の如き領域。

……下手に踏み込めば、その寒さに凍えてしまいそうだ。


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