81話 罪は私を緋色に染めて4
「それでは、何から話しましょうか?」
胡蝶が切り出すが、手を軽く上げて遮る。
「詳しい内容の前に豊に状況説明をお願い、色々と付いて行けてないから」
「解りました、簡潔に説明いたしますと地下花街の主とこの国の女帝は裏で通じていたと言う事です」
「それは見れば分かるけど……それだと何が良いのかが分からないの」
ああ、そうか、確かにそこまで考えるのは少々難しいか。
「そうだね、国の表と裏のトップが裏で通じているのであれば、法整備と共に裏でも様々な規則を設けて治安維持を進めたり、裏側と協力できれば国をより簡単に大きく動かす事が容易になる……それにこの人達がそこまでするかは疑問だけど政敵を暗殺する事も容易い」
「星華さん、貴方は本当によく分かって居ますね」
マーガレットに言われて苦笑する。
「私が元居た世界に居た時、少しそう言った事を調べていた事があったので」
私が記憶している時はほんの僅かな時間でしかないけど、その間に私は興味の沸いた事を普通ではありえない速度で体験していたから。
「……何となく解った」
何となくか、まあ、仕方ないか。
「豊が何となく把握した所で話を聞こうか、今になって来たからには、何かしらの用があるのでしょう?」
そう言うと胡蝶が頷く。
「この地下花街で狼藉を働く集団が最近現れているのです、とても数が多く、ここの用心棒達も手を焼いているのです」
「それだけであれば、まだそちらで対処するでしょう、まだ何かあるのですね?」
「はい、その狼藉者の集団は常にいくつかのグループに分かれて行動し、全く同じ時刻に複数の店を荒らしているのです、その行動を見るからにただ乱暴を働く事が目的ではなく、何か別の目的を持った者が裏に居るかのように見えるのです」
……確かに異常だ、この秩序の維持がしっかりと成されている居る筈のこの場所で用心棒達が手を焼くほどの集団が出来る事が一つ、それが完全に統率された行動をとる事で二つ、そして明らかに別にある目的、なるほど、それなら話が繋がる。
「この話は会議の時に軍務尚書が話していた国庫の記録改竄と、書物の紛失と無関係ではない、そう二人は考えているのか」
「その通りです、この事は犯人が身内に居る可能性が高いとマーガレットは判断したようです、そこで余りに目立ってしまうマーガレット自身や雑務の為に基本的に花街から出れない私ではどうしようも無い物と判断し、最も犯人の可能性が低く、花街、城両方に自由に行ける貴女に頼む事に決めたのです」
それを聞いて私は頷く。
「解りました、それでは失礼いたします」
そう言って立ち上がろうとするのを胡蝶が止める。
「件の狼藉者が表れる時間帯までにはまだ少し時間があります、私達と呑んで行きませんか?」
気持ちは嬉しいが首を振る。
「いえ、有難い誘いではありますが、私は初めて呑む酒は豊が作った物と決めて居るので」
「それなら仕方ありません……愛されていますね」
「あ、は、はい」
慌ててる豊を連れて外に向かう……時間は外の茶屋で団子でも食べてれば過ぎるだろう。




