79話 罪は私を緋色に染めて2
ダンジョンに一旦戻りベットに腰掛けながら封筒の封を切る……いつも使ってるペーペーナイフを城の方の部屋に置いたままだったから爪を使ったら雑になったが、まあ読めれば良いので構わない。
内容に目を通すと場所は予想の範疇でいつか行く積もりだったから都合が良い。
同封してあった指輪は無くさないように右の中指にでも嵌めておいて、豊が居る城内の私の部屋へと転移する。
「星華ちゃん、話はあの人に聞いてるよ、それでどこに行くの?」
転移すると豊は既にチョーカーを外して待っていた、服装も巫女服ではなく着物だ。
「紅葉の模様が豊に良く似合ってるよ」
「星華ちゃんも似合いそうだよね、特に菊とか牡丹とか……あと曼殊沙華とか」
「……私が筋者に見えるって事?」
別に菊や牡丹は可愛らしい物も多いが、明らかに最後のは悪意がある選択だろう。
「自分が黒地に曼殊沙華の着物着てその紅い刃の匕首構えてる姿、想像してみてよ」
「……確かにカタギの人間には見えないね」
でも、悪くは無いな、街中を歩くには少々目立ち過ぎだが、裏の世界なら十分ありだし、何より個人的に好きだ。
「……ええと、流石に機織りは出来ないよ」
確かにそんな柄は余り作らないだろうから基本自作になるだろう。
「別に大丈夫、足踏み式のなら機械の構造も分かるしやり方も知ってるから」
糸も何とかなるだろう。
「……それよりさ、どこに行くの?」
「ああ、忘れてたよ、口に出すのは止めた方が良いから付いて来て」
「分かった」
目的地へは真っ直ぐ向かわずに彼方此方へと寄り道しながら向かう……現状自分の陣営に敵が居ないと限らない以上、仕方のない事だ、手紙にもそうするように書いてあった。
……が、私たちが街を歩くとやはり目立つな、二人とも結構な美人だし、その上ダンジョンマスターだと知ってるからか頻繁に二度見される、いや寧ろ豊が腕に抱き着いてるのが原因かもしれない。
「……星華ちゃん」
「何?」
「多分だけど尾行されてる」
豊は何気ない風を装ってそう囁く。
確かに一定の距離を保って付いて来ている者がいる。
「分かってる、じゃあこうしよう」
幻術を使って他者から見る私たちの姿を変える、下手に姿を消すより分かりにくいだろう。
何とか振り切って目的地へと辿り着く。
幻術を解くと豊が話しかけてくる。
「星華ちゃん、ここって……」
「地下花街の入り口だけど?」
そう言って前に貰った花の書かれた札を見せて中に入る……尾行者はこれを持って居ないだろうから中には入れないと思うが、マーガレットがこっちに関係していると考えられては面倒だ、第一まだはっきりとしていない。
「あ、結構凄いね」
感想は単純だが確かに結構な街並みだ、様々な店を提灯の明かりが照らし、地下という事も合わさって幻想的な雰囲気を醸し出している。
「そうだね、それじゃあ行こうか」
そう言って豊の手を引いて行く。
少し歩いて小さな茶屋に入り、取り敢えず団子二人分とお茶を頼む。
「……団子美味しい」
呟いた豊の頭を撫でてから、お代を払う。
「その指輪を付けてるって事はあの子の言っていた人だね、さあ、待ち人はあの下だよ」
店主のおばあちゃんがそう言って指さしたのは店の裏手にある涸れ井戸だった。




