75話 束の間の安寧15
「やっぱり結構痛いね~」
ベットに寝転んで豊のマッサージを受けているが、これが結構効く。
「しょうがないよ、星華ちゃんは無理しすぎなんだから、あの二人ぐらい瞬殺出来るのに弄ぶから……」
「流石に殺すのは拙いでしょうが、それに楽しく無いんだもん」
「可愛く言っても無駄……じゃないけど、内容が殺し合いなだけに楽しさを求めるのはどうかと思うよ?」
そうして話してる間もマッサージは続き、全身の痛みが引いていく。
「……そういやダンジョンメニューのシステム直ったの?」
豊に言われて思い出した、すっかり忘れていたけど。
「多分直ってると思うよ、今は見る気ないけど」
見たらなんか変な事が書いてありそうだ、なんて言ったって『閲覧権限がありません』が『表示できません』になってたって事は 閲覧権限を得た事になる筈だから。
しかも普通システムと表示される類の設定などは別に用意されていて、尚且つダンジョン関連の情報はほぼ全て開示されている……となると閲覧権限が必要なのは恐らくダンジョン以外の部分を含むシステムの可能性が高い。
「それって……知らない方が良かったって思う奴じゃない?」
豊の反応は尤もで、私も激しく同意する。
……でも知らない訳には行かない類の情報なんだろうな。
マッサージを受けるにつれて段々体が熱くなってくる。
くるりと寝返りを打つとマッサージをしていた柔らかな手を取って引っ張る。
すると当然ながら豊は私に覆いかぶさる様になる。
「こうしてると豊に押し倒されたみたいだな~」
思った事を呟くと豊は顔を真っ赤にする……可愛い。
「星華ちゃんがやったんでしょ」
「そうだよ?でも普段私が押し倒す側なんだから、たまには変わった事もしないとね」
耳元でそう囁いて抱きしめる……照れて逃げようとしても逃げれないように。
ふと胸元に硬い物が当たる感触があり、そっと手を触れてみる。
「月のネックレス、着けてくれてるんだね」
「勿論だよ、星華ちゃんがくれたんだから肌身離さず身に着けてるよ」
その言葉に嬉しくなってついつい頭を撫でると嬉しそうに笑う……なんか動物っぽいな。
「最初は束縛の証って感じで首輪が浮かんだけど巫女服だから合わないしね、だからって裸にするのは酷だし、他の服着せようにも巫女服が一番似合うからね、ネックレスのあまり派手じゃないのを選んだけど、似合ってるね」
そう言ってから、ふと思い立ってダンジョンメニューのショップを開いてカタログを見て、良いものがあったからそれを交換する。
転移で送られてきたそれを豊に渡す。
「これもあげる……どうせならずっとじゃなくて、私の前でだけ着けてくれると良いな」
そう言って一見首輪にも見える装身具を見せる。
「……チョーカーだよね、分かった、これは星華ちゃんの前でだけ着ける事にする」
渡したチョーカーは黒色で、形はベルトに近い構造……一見首輪に見えるどころか、どう控えめに見ても首輪にしか見えない。
そんな束縛の証を喜んで受け取る豊のその温もりを肌で感じるようにしっかりと抱きしめると、お互い相手を絶対に離さないという心の儘に抱きしめる手に力を籠め……唇を重ね合わせた。




