68話 束の間の安寧8
「うんうん、頑張ってるね~」
アザトースがいつの間にか帰ってきている。
「星華ちゃんじゃ無いからって何時まで居る気?」
「ん~飽きるまで」
「ダンジョンバトルの前に片方のダンジョンに入り浸ってて良いの?」
「いいのいいの、私邪神だから」
……その理由はどうなのだろう。
無駄話を聞きながらも魔術を教えていると外から轟音が聞こえてくる。
「え~と、まさかとは思うけど」
アザトースは驚きのあまり飛行の魔術が解けている。
「星華ちゃん以外に居ないねあんなこと出来るのは」
「……行ってこよ」
『私も行って良いですか?』
「そうだね、基本は出来てるし見に行こうか……私も何できたのか気になるし」
音の聞こえた方向は分からなかったが、場所は一目見ればわかった、十数本の木が薙ぎ倒され、煙を上げている。
「やりすぎたかも」
一人でぼやいてる星華ちゃんに聞いてみる。
「何やったのこれ」
「新魔法の試運転、作ってみたけど威力下げてこの結果だよ」
……雷公鞭を最大出力で使ったのかと思った。
「新魔法って、そんなあっさりと言える事じゃないと思うよ」
「なんか魔法能力与えたっけ?」
「別にこの世界ではアザトースに与えられなくても訓練で身につけれるんでしょ?」
「……そういえばそうだね、そんな事するダンジョンマスター殆ど居ないけど」
「だから研究しただけ、色々組み合わせたけどそれだけ」
……相変わらず星華ちゃんのそれだけはそれだけと言っていい内容じゃないと思う。
「で、これは火の系統だね……っていうか他の五行要素が完全に淘汰されてるし」
「普通の魔法は複数の五行要素が混じってるからね、それを完全に淘汰したらこの威力になった」
見ると地面もそれなりに抉れている。
「……ダンジョンバトルでこれ使われたらダンジョン持つかな?」
「アザトース、そこは耐えれるようにしといて」
「……まあ一応不壊って言ってるしアップデートしておくよ」
「ああ、セイも居たのね、訓練は順調?」
答えはある程度予想できるが聞いておく。
『はい、ある程度は出来るようになりました』
「そうだね、私も驚いてるよ、ここまで高濃度のエネルギーをここまで濃縮するのは私にも無理、星華ちゃんと同じ種類の奴だよあれは」
……そこまでとは、素晴らしい、予想の更に上を行ってくれる。
「その能力を見せてみて、ここに丁度いい土地があるから」
「その丁度いい土地作ったのはアンタじゃん」
いつも通りツッコミを入れてくるアザトースは無視する。
『はい、やってみます』
そう言ってセイは両手を丁度水晶玉を持つような形にしてその間に魔力を溜める。
……珠の完成までの所要時間は数秒か、それでここまで出来たら十分だ。
そしてセイがそれを放つとその珠はゆっくりと進み、荒れ地の真ん中で炸裂した。
「……ここまでか」
閃光に思わず目を閉じて、開いた時、そこは多くの植物に覆われていた。
予測だがこれはその場に散らばっていた木々の破片やその種を基に再生したのだろう。
「豊、これを行うのってどのくらい大変?」
「……私だったら神格を利用すれば簡単だけど、素の状態でしろって言われたら多分半分ぐらいしか出来ないと思う」
なるほど……恐らくダンジョンマスターそしての補正もあるのだろう。
「ところで……アザトース、前から思ってたけど何で私に神格が無いのかな?」
そう言ってアザトースが逃げようと開きかけた転移陣を魔力で乱して止める。
「邪神の魔法陣を阻害するって何なのアンタ」
「話聞いてる?」
「あーハイハイ聞いてるよ、神格だけどね、一応神本人の許可が居るんだよ、一応その能力を分ける訳だし、それがさ、アンタが居た国の神に聞いたらほぼ全員が拒否したんだよね」
……うわ、酷い理由だ。
「要するに私がヤバイ奴ってこと?」
「うん、そういう事……拒否したのあいつ等だから私は関係ないよ」
「もうアザトースの神格を分けてよ」
「……いや、止めとく、アンタに私の神格渡したら絶対アカン事になる、っていうか色々バランスが崩れる」
なるほど……じゃあこう言うか。
「それってこの世界の管理者システムとかに関係してるの?」
「なんで知って……しまったぁぁぁぁぁ!」
「煩いよ、なるほど、余り力を持ちすぎると管理者システムに割り込まれるかもしれないと」
「うわぁ、鬼の首を取ったように……ていうかこいつが鬼だ」
「いや、違うか、この世界の管理者は今は眠っていて起こしたらヤバイからなるべくやりすぎないで欲しいのかな?」
「……ノーコメントで」
「うん、図星かな、まあ分からないけどどっちでもいいか」
アザトースをいじって遊ぶのはこのぐらいにしとくか。
「でも流石に私に神格与えないとなると自分で作ったルール壊す事になるよ」
「ぐぬぅ……」
最近分かったがアザトースはダンジョンシステムを作る際にある程度のルールを作っていてそれは出来る限り守ろうとしているのだ。
「さあ、どうするの?」
「……時間かかるかもしれないけど他の国も巡って神格を上げても良いって言う酔狂な神を探してきます」
「それじゃあさっさと行ってこい」
そういうとアザトースは直ぐに何処かへと消えていった。
「なんか色々知らない方がいい事が聞こえた気がする」
「なら忘れていいよ、さてそれじゃあ魔道具も出来てるし、私が教える番だね」
『解りました』
今は時間が惜しい、さっさとダンジョンに戻るとしよう。




