66話 束の間の安寧6
「アザトース、そういう事でよろしく」
「……全部計画通りみたいだね」
当然だ、セイの狂気を見ればこの展開は容易に想像できた。
「碧火、橘花、そろそろ起きてるでしょ、痺れて動けないだろうけど」
そう言って二人の体から痺れを消す、帯電している魔力を抜くだけだから簡単だ、暫くは動けないだろうが。
「というか、エルにあれをあげたのアザトース?」
「僕にこれをくれたのはその邪神より大人に見える女の人でした」
「え~と、多分ニャルだねそれ、ダンジョンコアも結構良いものだし」
全く奴は面倒な事をしてくれる……いや、逆かな。
「セイ、彼から何を望む?」
『私の邪魔をしない事を』
「エルは?」
「人を傷付ける事を止めて貰います」
「……対極だね二人とも、それじゃあこのアザトースが審判を務めるとするよ、試合形式はどうする?」
そこに関しては私が提案する。
セイがダンジョンを作り、エルが攻める、セイのダンジョンは安全の為に私のダンジョンの城部分がある三階層目からの分岐で作ってもらうけど、ダンジョンバトルではセイのダンジョンの入り口とエルのダンジョンの入り口を繋げればいい。
『構いません』
「僕もそれで」
「面倒にならなくていいね、それじゃあ開始は何時にする?」
「三日……いや四日にしておこうか」
それだけあれば十分用意できるだろう。
「解った、それじゃあその時にね」
アザトースが帰ろうとすると後ろから声がかかる。
「私たちも参加してよろしいですか?」
「いいよ、二人とも本気でおいで」
私が言うと碧火と橘花は頷く。
アザトースが帰ると、豊が扉を開けて入ってくる……弓に矢を番えた状態でだ。
「星華ちゃんが無駄な事をすると思ってるの?あんまり邪魔をするようなら私が排除するよ」
「豊、武器を収めなさい、私の行動が一般に普及している善という考え方に反している事は自覚しているから……それにこの状況もまた一興よ」
「分かった」
「豊は今回のダンジョンバトルの間は敵勢力の動向を探っといて、それと開始までにダンジョンを作ってる合間にセイに魔術を教えて欲しい、木気が強いから豊と同じ筈よ」
そう言って豊が頷くのを確認する。
「貴方達もそれでいいね、援軍を呼ぶのは構わないけど、国の方の戦力も考えてね」
そう言ってさっさと皆を追い出した。
残った二人に軽く作戦を説明する。
「マスタールームは取り合えず私のダンジョンと統合しとくよ、でもってダンジョンを作って迎え撃つ、簡単だよ」
「星華ちゃん、分かってると思うけどエルも結構強くなってるよ、橘花と碧火は言うまでもなく強いし」
『私はどうすれば?』
「ダンジョンについては考えがある、あとは魔法、豊が植物を使う魔法、私が陰を支配する魔法を教える……そう簡単には負けなくなるよ」
豊がふと思いついたように提案する。
「他の五行の性質については学ばなくていいの?私は水と木、空は火と土を扱えるけど」
「そうだね、私は陰陽の陰が使える、適正はあるみたいだから最終的には全て教えるつもりではあるけど、今は時間が無い、取り敢えずは適性の一番高い木と陰を覚えてもらう」
『解りました』
セイが頷き私は必要な事を頭の中でまとめた。
「ダンジョン作成はいろんなパターンを考えて纏めたのがダンジョンの居住区でいつも使ってるベットの脇の机にあるから見といて、でもって豊はダンジョンの考案の手伝いと魔法を教えといて、私は作る物があるから魔道具の研究場所に行ってくる」
研究場所はセイに魔力の感じ方を教えた場所の小屋の地下にある……城の部屋を借りてやってたが爆発事故が起こりそうだったから迷惑にならない場所に変えた。
「……いつの間にそんな場所を」
「不安定にした魔法陣の紙を使って爆破で空間作ってダンジョンの能力で整備した、それじゃあ後はお願いね」
そう言って研究所へ向かう、行うのは魔力回路が壊れてしまっていた雷公鞭の改善とセイの為の魔道具の作成だ。




