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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
7章 束の間の安寧
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64話 束の間の安寧4

 こちらに向かってくるもう一人の私に対し私もナイフを手に取る。

「あたしと戦う気?勝てる訳無いじゃない、アンタはあたしなんだから」

そう言って彼女は私にナイフを向ける……その通りだ、恐らく勝てない。

そっとナイフをすれるともう一人の私は近づいて私の耳元で囁く。

「あたしはアンタの本音、憎み、壊す存在、さっさと体をよこしなさいよ、そうすればアンタの望みを叶えてあげる」

『この人は?』

そう聞くと彼女は嬉しそうに笑う。

「何もする訳無いじゃない、私はアンタよ、願いも望みも根本は同じ」

そう言われて私は星華さんを見る。

『私はどうすれば?』

星華さんは私の問いに軽く笑う。

「好きにしなさい、私はどちらの貴女でも構わない、結局同じなんだからね」

その言葉で全てを悟った。


 『貴女に体を上げる事は出来ません』

「そっか、なら奪うよ」

『もう、貴女が持っているものを上げれる訳がありませんから』

「何言ってるの?」

『貴女は私、なら貴女も私もこの体を共有している事になる』

そうだ、目の前の私も星華さんも言っていた、二人は同じだと。

『だから別れてしまったならもう一度一つに戻りましょう』

「勿論よ」

その言葉に戸惑う、なんと言っても今まで私の体を欲していたのだから。

「馬鹿ね、あたし達は同じなんだから変わらないわよ、あるべき姿に戻るだけ」

そう言ってもう一人の私は星華さんの下に向かう。

「これでも私の人格は彼女とは離れてるから言っとくよ、あいつを頼むよ」

「当然よ、良いのね?」

「ええ」

そう言って私の前にやってくる。

「これであたしはここから消える、悲しむ必要はないよ、アンタの中に戻るだけだからね」

そういうと彼女の体は薄れていく。

「時間が来たみたいね、さあ戻りなさい」

星華さんがそういうと彼女の体はこの空間に溶けていく。

「ここは貴女の世界、彼女はそこに帰っただけ、私は先に出るよ、貴女は記憶のある夢としてこの世界に入っているからゆっくりと休みなさい、起きたら大変な日々が始まるから、それまではゆっくりとお休み」

そう言って星華さんは扉を開けて出ていく、その瞬間私は最初に居た花畑に再び座っていた。

空に浮かぶ月の下、そっと一輪の花に手を伸ばすと今度は崩れることはなく掴み取れた……それはまるで私の行く先を表しているようでもあった。

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