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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
6章 華相院の問題児
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60話 華相院の問題児21

 「お見舞いに来ましたが……機嫌が悪そうですね」

「うん、星華ちゃん、あいつにいいようにされて機嫌がかなり悪い」

「……聞こえてるよ、豊」

声をかけるとマーガレットがこっちを向く。

「体の具合はどうですか?」

「一晩寝たら良くなった、相変わらず本来の力は出ないけど」

現状で二割五分といった所だ。

それより自分は大丈夫なのかと問うと彼女は微笑む。

「精神攻撃で疲れただけなので直ぐに治りました」

「じゃあ空は?」

「寝込んでるけど命に別状は無いよ、狂気伝染で体を痛めつけた挙句無理をしたんだから自業自得だよ」

答えに満足して私は豊にある人を呼んできてもらった。


 そっと扉が叩かれる。

「来たね、二人とも、入りなさい」

声をかけると、ダンジョンから呼び寄せたセイとエルが入ってきた。

「いきなりだけど話があるの、聞いてくれる?」

『はい』

「もちろんです」

二人の答えに頷いて私は説明を始める。

「見ての通り私は今本来の力を出せない状態にある、それにこれは人間の戦い、ダンジョンマスターが干渉してくるなら私が出るけどそうでなければ出来るだけ人間だけで勝敗を期すのが好ましい。

そこで、私が直接物事を頼める信頼の置ける仲間が欲しいの、つまり貴方達に手伝って欲しいんだけど、良いかな?」

『貴女には返しきれない恩があります、その貴女の為に何かを出来るなら殺しであっても喜んで行います』

「僕はセイの判断に従います」

二人を利用し、戦争に巻き込む事に罪悪感を感じながら命令を行う。

「それじゃあ二人には華相院に入って貰う、確かに二人は強いけど私の直属となるには戦闘以外の能力も必要だからね、エル、貴方は橘花ちゃんと技を磨きなさい、橘花ちゃんは強い破魔の力があるけどコントロールが苦手、貴方はコントロールが得意だけど出力が弱い、互いに教えあって磨いて行きなさい」

既に彼女には話を通して許可を貰っておいた、そうなるか分からないと話してはいたが問題無いだろう。


 そうして挨拶の為にエルを橘花の部屋に行かせると、マーガレットは空の見舞いに行き、二人だけになる。

「セイ、貴女は私が教えるわ、まず貴女は魔力を持たないから代わりに霊力を高めるわ、その方が魔力と比べて高めやすいから、勿論修行ではあるけどね、そしたら心の中にある狂気や憎しみと霊力を使って瘴気を作り出す方法を教えて、出来るようになったらそれを纏い、攻撃へと向ける訓練をする、厳しいけどいいのね?」

確認するように聞くと彼女は頷く。

……仕方ない、やるからには絶対に死なない程に強くするだけだ。

だが彼女に才能があるのも事実、強い狂気を持つダンジョンマスターの術である狂気感染すらも覚えてしまうかもしれない。


 「ところで、エルの事をどう思ってる?」

『大切な人です、ずっと一緒にいたい友達です』

その文を見て私は苦笑する。

「友達か、恋人ではないんだね」

『エルは大丈夫だと分かっているけど男の人は怖い』

「まあ仕方ないよ、そもそも私以外に心を許してないしね」

そう、彼女はマーガレットや豊に対しても警戒を解かない、私とエル、そしてアリーだけが例外のようだ。

それが今回の教官を私がする理由だが、そもそも私以上に狂気魔術の使い手が居ないのが一番の理由だ。

『それでは何をすれば宜しいですか?』

それを聞いて私は少し考える。

「私は数日安静にしてないといけないからその間豊のダンジョンで農作業をお願いできるかな、流石に豊一人では大変だと言っていたし、あれはあれで重労働だから基礎体力作りには丁度いい、それに豊に対してはほかの人ほど警戒はしてないでしょ、だからお願い」

『解りました、豊さんの所に行ってきます』

そう言ってセイも出て行って一人になる。

……これを機に少なくとも豊とは打ち解けてほしい、空とは面識が無いから難しいだろうが豊なら何とかなると思う、豊は単純だから打ち解けやすいし。

打ち解けやすい人間ほど苦手意識が強いと言われるとどうしようもないが、そうなったらまあ仕方ないと諦めるしかないだろう。

先日のダンジョンマスター本人との戦いでいつの間にか食らっていた毒の効果で痛む胸を左手で抑えて竹筒に入った豊の薬湯を飲む。

……思ったより何とかなりそうだな、空は紅蓮という将軍とやる気のようだし、エルは確実に強くなる、セイも僅かでも薬の調合を覚えてくれる可能性もある、寧ろあの性格なら自ら学ぶだろう……私の為に。

考えるだけでは堂々巡りで進展がないので諦めて思考を中止し、目を閉じると簡単な魔力の操作で精神の高ぶりを沈めて迫ってくる暗闇に意識を委ねた。

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