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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
6章 華相院の問題児
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53話 華相院の問題児14

 「少し出て来る」

「まだ駄目…あ、ちょっと待って」

追いかけて来る豊をよそに城壁の上に向かう。

「ちょっと星華ちゃん。まだ治ってないんだから無理しちゃ駄目だよ」

「豊のおかげで大分楽になったよ」

「傷は治ったけど毒の後遺症までは消し切れて無いからね」

「解ってる、傷が完全に消えただけでも十分、いつあの電波で中二病を拗らせたのが来るか解らないのにじっとしてられるか」

しかも、こんな状況で中二病が暴走してない訳が無い……アザトースとかいう存在も居る事だし。

それに……御礼参りはしっかりさせてもらう。


 「大変です!」

「何があった?」

駆け込んできた見張りに聞くと焦った様子で状況を説明される。

「また魔物の軍勢です、今度はスケルトンが300程」

「華相院の訓練生は?」

「この間の惨状を吟味するまでもなく駄目との事です」

……それでも兵の訓練を受けている者かよ。

「一般の兵は?」

そう聞くと見張りは何故か口ごもる。

「どうした?」

「本人の居る前で大変申し訳ないのですが……その、豊殿が作って下さった昼食を食べた所全員が腹を下しました」

「豊、何を入れた貴様は!」

「毒抜きをした蛇とスッポンみたいな亀」

……呆れて物も言えないとはこの事か、本当に何を入れとるんだこいつは。

「でも、火を通したから……」

「私なら大丈夫だけど普通の人が食べたら腹下すわそんなん」

「それでどう対処いたしますか?」

「……仕方ない、私が行く」

「私も行くよ、星華ちゃんが心配だし、私にも原因があるから」


 「300と聞いて居たが……少なく見ても450は居るな、そのうちの50が弓で残りが剣か」

「そうだね、私も短刀持って来て良かった」

二人だが何とかなるだろう、少なくとも一人よりは良い。

「毒に気を付けて、矢にも剣にも塗ってあるはず」

「解毒できるのが毒にやられたら大変だもんね、それより体は大丈夫?」

「うん、あいつらみたいなアンデットが出す瘴気が私の体質に合うからね、少しづつ取り込んで回復してる」

勿論それは人間には毒だ、豊は私とは真逆で瘴気を浄化する体質だから問題ない。

「さあ、さっさとやるよ」

「そうだね」


 向かってくるスケルトンを切り伏せ、砕き、骨を外す。

「ちょ、首無いのに動いてる」

「豊、仙骨を壊して」

「いや、仙骨ってどれ、っていうかそれ何?」

「体の土台、背骨を支えてるの」

「これかな?……よし、動かなくなった」

短刀で素早く仙骨を破壊して豊は小さな歓声を上げる。

「まだまだ居るよ、豊、鬱陶しいから射手を潰して、その間の護衛はするから」

「解った、お願い」

すぐさま弓に持ち替え、射撃に移った豊を守るように戦う。

いつもの一割出てるかどうかと言った所だが、この位の相手なら問題ない。

「星華ちゃん、矢が効いてない!」

言われてそちらを見ると矢は敵に当たる直前で弾かれている。

防壁……と言った所だろうか、当たれば肉が弾け飛ぶ豊の矢を返すとはかなりの強度だ。

だが、弱点は解っている、書庫で読んだ物の中に似たような魔術の記載があったのだ。

「魔法で一気に吹き飛ばせ」

「うわぁ、凄いにこやか……よしやるか」

【氷弓術・氷柱つらら

一本の氷柱を放ったと思うと一気に巨大化して複数の敵を巻き込みながら三匹の射手を仕留める。


 「キリが無いよ、星華ちゃん」

「仕方ない、魔法は苦手だけどやってみる」

辺りに散らばっている既に魔物ではない骨を使わせて貰う……パーツがあちこち壊れているが沢山あるから繋ぎ合わせれば何とかなるだろう。

懐から取り出した一枚のタロットを媒介に魔術を発動する。

【禁術・死霊傀儡デットパペット

魔力をかなり吸い取られたが何とか成功してそばにあった骨が動き始める。

「流石に死霊を召喚するのは危ないけど何とかなった」

「何だか星華ちゃんが生み出した方が強そうなんだけど」

「ダンジョンモンスターの素材を基に私が魔力を注いだからね、何かの反応があってもおかしくないよ」

「確かにどっちかって言うとあの人より星華ちゃんの方が死霊術に向いてそうだしね」

なんか骨がドス黒くなってる……赤っぽい黒だけど。

「射手の防御は破れないからあいつらは私たちでやるよ」

【抜刀術・斬首、公開処刑】

【弓術・五月雨】

スキルの強烈な威力によってどんどん数が減っていく。


 「終わったね、星華ちゃん……どうかした?」

「この僅かな地響きが聞こえない?」

「無視したいんだけど」

解る、正直かったるい。

「今度はゾンビか、テンプレモンスターはもう飽きた」

そう言いながらも一度は収めた匕首を抜く。

その間に200は居るゾンビが襲い掛かって来た。

【ユニークスキル・退魔の法】

「マーガレット、何しに来たの?」

「手伝いに決まってます、私の法術は死霊には強いですから」

その言葉の通り術を食らったゾンビ達が吹き飛び、焼け爛れて人肉が焼ける臭いを放つ煙を上げながら動かなくなる。

「これでも数体、マーガレット、あれやってよ、私をぶっ飛ばした奴」

「あれは、魔力的にも体力的にも私にはキツイのですが……」

「魔力は私が送るから」

そう言いながらも正義のアルカナで彼女の魔力に近い性質に変換して送る……苦手な種類の魔力に変換するせいでロスは多いが元の量が多いからそこまで気にならない。

「仕方ないですね」

そう言って彼女は魔法陣を一瞬で構築して魔力を解き放った。

【ユニークスキル・魔滅の光】

そのままでは一本の太い光線であるそれを魔法陣に少々干渉して辺り一面の魔を焼き尽くす拡散型に作り替える。

「しまった、制御が!」

【邪術・悪魔の嘲笑デビルズスマイル

暴走した魔法に強制的に真逆の性質で同程度に威力を調整した魔術をぶつけて消滅させる。

「少し掠ったか、前より威力増してるね」

「それは貴女の援助があったのと暴走したからです、大丈夫ですか?」

「利き手の右手の甲を少し火傷したけど問題は無いよ、焼け爛れる程じゃないし」

強いて言えば物凄く熱い水蒸気に触れたようなものか、ヒリヒリする痛みはあるがそこまででは無い。

「豊、お願い」

「解ったよ、その間は一緒に居られるからね」

「私はそろそろ帰ります、また仕事が増えたので」

「ご苦労様、頑張ってね」

マーガレットを見送ったあと手に火傷を保護する布を巻いてもらう。

「ありがとね」

「星華ちゃんの為ならこのぐらい……よし出来た、後で火傷に効く軟膏を作ってあげるから余り動かさない様にね」

「それじゃあ帰ろうか」

「はい」

ふと思いついて言ってみる。

「手を繋ぐ?」

「うん」

そう言って少し恥ずかしそうに差し出された豊の右の手を私の左の手でしっかりと掴む。

その手は外気の影響で冷たかったけど、豊の嬉しそうな顔を見ていると気のせいかも知れないけれど何だか暖かい物が胸の奥に込み上げて来るような気がして……そしてそれが少し怖かった。

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