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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
6章 華相院の問題児
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49話 華相院の問題児10

 「……来ましたね、大丈夫ですか?」

「大丈夫、この手の事は慣れてるから、寧ろ手にこびりついた血を洗い流す方が大変」

着ていたのが町で買った安い薄手の物で良かった、汚れても構わない、訓練とかで汚れても良いように買ったものだし。

「そう言えば今はいつものドレスですね」

私が普段来ている黒のドレスは動きやすい作りだし、どんな汚れも洗えば落ちる凄い奴だけど、問題が一つあった……物凄く乾きが遅い、明らかに薄手なのに全く乾かない。

それを言うと彼女も少し笑って見せる。

「何事もうまくはいきませんね。」

「そうだね、それじゃああの金属の筒を開けよう」

そう言って表面の血を洗い流してきた金属の筒を手渡す。

「解りました」

そう言って彼女はそれを開けようとして……出来なかった。

「貸してみて……これ知恵の輪だ、解りずらいけど」

「解けますか」

「それなりに難解だね……あ、開いた」

ねじりながら振ってると何故か開いた……まあ、厳密には開いてないんだけど。

「どうやらアルミ製だったみたいだよ」

「完全にねじ切れてますねこれ」

「……開いたし良いよね、それじゃあ見るよ」

筒の中に入っていた二枚の紙に目を通すと、そのうち一枚を彼女に渡した。

「私にですね、降伏の勧告ですね、形式だけでしょう、今更ですし、もう一枚は?」

「私宛、裏切りを進める物ですね、これは私が持っておきます、利用できるかも知れませんし」


 「これは、これだけの物でしょうか?一人の命を犠牲にするほどの価値があるとは……」

「無いね、だから犠牲にしてないんだよ」

「どういう事ですか?」

必要が無いかと思って黙っていたが、仕方なく話す。

「あの死体は明らかに死後五日は経ってる、ある程度の防腐処理はしてあったけど私の目は誤魔化せない」

「つまりあれは死体の状態で帝国からここまで来たという事ですか?」

「そう」

「一体どうやって?」

「ここの図書館で読んだ物の中にそれらしき物があった、死霊術ネクロマンシーの記述が」

死霊術は死体に魔力を流して体を動かす電気信号を再現する事によって動かす物と、文字通り死霊を死体に取りつかせて動かす物があるが、今回は前者だろう……どちらも邪法でかつ、禁術である事に違いは無いが。

「敵に術者が?」

彼女も危険性に気付いたようだ、もしこの術者が死霊を使う方の術で動く死体を量産したら危険な兵になる、自分の体の崩壊も、被害も考えないゾンビの軍勢だ。


 「……防いでくれますか?」

「魔法について試したい事があるのでそのついでなら、あと道具が必用なんですが」

彼女はあっさりと頷く。

「後で必要な物のリストを送って下さい、用意させます」

「まあ、私が魔法苦手だから試してる事なんだけどね、一旦別の媒体に魔力を貯めて置いて、その媒体に仕込んでおいた術式を発動させる物なんだけど……私のタロットを使った魔法に近いね、でもあれでも私の資質に合わない浄化とかは負担が大きいから、やりたいのは全く才能が無くても発動できる物、使い捨てでも考案できればと」

「……それ、出来たら凄い技術革新ですよ」

なるほど、よしやろう、魔術革命だ……情報は極秘にしておくけど。


 「それともう一つ、使う人の少ない時間帯で良いから鍛冶場を貸して欲しいんだけど」

「何を作る気ですか?」

言われて私は苦笑を浮かべる。

「ちょっと贈り物をね」

「そうですか、勿論構いません、手配をしておきます」

「ありがとう、あと砂金を少し銀に変えて置いて下さい、使いますので」

そう言って砂金がある程度入った袋を渡す。

「はい、後で部屋に送っておきます」


 部屋に帰ると橘花が既に訓練から帰ってきている。

「星華さん、今日はどうかしましたか?」

「少し厄介事に巻き込まれててね、内容は聞かない方がいい、吐きそうになると思うから」

「……その一言で十分解ります」

「欠席は通達が行ってるから心配しなくていいよ」

「はい」

話しながら私は書類を数枚取り出す。

「私は少しやる事があるけど終わったらさっさと寝るよ、橘花は先に寝といたら良いよ」

「はい、おやすみなさい星華さん」

そう言って布団に潜り込む橘花に見えないと解って居ながらも笑いかける。

「お休み、橘花」

その一言はきっと聞こえては居ないだろう、既に規則正しい寝息が聞こえていた。

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