4話 狩猟
「コロはマスタールームで待っててね」
「ウォ」
短く鳴いたコロを措いて外に向かう。
・・・出口どこだっけ?
迷った?自分のダンジョンの中で?まじか。
同じような道を行ったり来たりどうしたものか。
そう思ってふと耳を澄ますと川の流れる音が聞こえてくる。
・・・やっと出られる、もう道は覚えた、多分。
「外だ~」
誰も居ないけど取り敢えず言ってみた、言ってみただけ、特に意味は無い。
そこは山の中だった、まあ自分で決めた場所だから知ってたけど。
川もある、森もある、動物が居る音も聞こえる、空気はきれい、でもいくら見回しても集落が無い。
や、あった、十キロは先だけど。
今はどうでもいいか、食料の調達が先だ。
取り敢えず木に生っていたリンゴの様な果物を一つもいで齧ってみて後悔した。
これレモンだ、すっぱい、丸かじりしたのは失敗だった。
これはダンジョンの入り口付近に生えてるし必要なら取りに来れるから今は措いておく。
じゃあこのレモンみたいなのはリンゴの味かな?
そう思って食べたらミカンの味がした・・・最早謎だ。
私何しに来たんだろ、狩りだよね。
丁度良い獲物はっと、居たあれが良い。
私が見つけたそれは鹿に見えた・・・多分鹿だと思うそれは足が六本だったり羽が生えたりしている事は無くごく普通の鹿に見える。
・・・角が生えてるのは普通か。
変な所があるなら狩ってみれば判るだろう。
木の上から忍び寄って一気に飛び降り、理解させる間もなく脳天に肘を打ち込んで気絶させ、そのままダンジョンのマスタールームへと運び込む。
「なんで居るのあんた」
「別に居てもいいじゃん、一応は上の者なんだから敬ってよ」
あーハイハイ、いあいあ。
「なんかもの凄く適当な適当な敬い方を心の中でされた気がする」
「で、見てないで手伝って」
「後ろ足を縄で縛って天井からぶら下げろって?」
「そう、ぶら下げる所ないから持ってて」
「数十キロはあるよ!」
知るか。
アザトースは壁にフックを作ってそこに縄を掛ける。
「もうこれ上げるから次からは自分一人でやってよ」
・・・勝った、何かに勝った。
吊るされた鹿が意識を取り戻した様で怯えた目を向けて来るがそんな事は関係ない。
「ついでに狩猟用のナイフくれない?」
「大した物でもないし良いよ、後で5DP差し引いとくけど」
「DPと道具や食料を交換するショップみたいなのダンジョンメニューに追加したら?」
「今整備中だよ、もうすぐ実装できる」
それは後の事として今は渡されたナイフで喉の動脈を切り、血を抜く。
保存性を高めるためにも必要だけど、臭みが出るからね、血抜きはしっかりしておかないと。
血抜きが完全に終わると解体を始める。
筋繊維の把握をしながら部位ごとに切り分けていく。
「まだ終わらないの~?」
「黙ってて」
やがて解体が終わるとコロが近づいてくる。
肉の塊を上げるとガツガツと食べる。
私は拾って来た薪に持って居たライターで着火し、肉を二枚薄く切って焼く。
後はさっき食べた残りのあのレモン味のリンゴを絞って少しかける。
アザトースに一つ渡してもう一つは私が食べる・・・うん、美味しい。
「おお、旨い」
「騒がしい」
「旨い物を旨いと言って何が悪い」
まあ、どうでも良いけど。
取り敢えず鹿肉は旨いという事は解った、それで良しとしよう。




