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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
6章 華相院の問題児
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42話 華相院の問題児3

 「今日は一日を丸ごと使って私が礼の授業を行います、この為に最低学年の皆さんを幾つかのグループに分けて一グループ一日としました・・・ああ、自己紹介を忘れていました、私は稲神豊、臨時の礼の講師と共に実戦弓術の講師としても呼ばれました」

そう言って豊は自己紹介を終え、数十人の生徒を専用の部屋に案内する。

「ああ、緊張しなくても良いですよ、私も堅苦しいのは苦手なので」

・・・こいつ野山を駆け回ってる方が性に合ってるからな。

「さあ、御茶にしましょう、礼儀を忘れずにね」

豊の一言に場が凍り付く、必修となっている礼の授業だが、最近は形骸化が進み殆どなされて来なかったのだから当然だ。

豊から抹茶と茶菓子が振舞われ、作法に則って飲む、少しでも無作法な事をすれば注意を受ける状況でだ。


 張り詰めた緊張の中、一度の注意も受けずに終えたのは僅か数人だった、それもその中の更に数人を除いては全身に冷や汗をかいている。

そんな中無謀な者が声を上げた。

「これに何の意味があるんですか、そんな事より訓練をすべきでしょう」

「・・・そう思いますか?」

完全に冷え切った豊の声にも気付かず、少年は声を上げる。

「そうです、大体実力も知れない上に自分と年の変わらないような相手に教えられたくはありません」

「・・・それもそうですね、なら教練場へ行きましょう、時間は沢山あるのですから」

地雷を踏んだな、豊は意外と礼法を大切にして、戦い方もその精神のあり方を盛り込んだ我流の物だから。


 「それでは始めましょう、好きに掛かってきなさい、もし勝ったなら貴方の発言を認めてあげましょう・・・星華さん、開始の合図を」

豊は教練用の弓の張りを確かめると私に言う。

「はい、開始!」

私が放ったその言葉と共に豊は矢立から矢を抜き取り、一瞬で放つ。

「避けるとは反射神経はあるようですね」

そう言いながらも三本の矢を連続で放ち追い詰める・・・矢じりが緩衝材になっている対人訓練用の矢でも当たれば痛い。

「さて、終わりにしましょう」

そう言って豊は持って居た弓を捨てて置いてあった彼女本来の弓に矢を番えて放った。

放たれたその矢は標的に届くことなく砕け散った。

「・・・矢がいつものよりも脆い事に気付きませんでした、それでも貴方の負けです」

刃の付いた弓本体を突き付けられた少年は気絶する。

「その程度で良いのでは無いですか、教官?」

私の言葉に我に返った豊が頷く。

「そうですね・・・皆さんいいですか、礼法は心と体を一体化する方法極めれば今の様な速射も可能です、それでは一旦茶室に戻りましょう」


 「次は何をしましょうか・・・そうですね、礼法は一人一人の心構え、私が教える事は実際あまりありません・・・いいこと思いついた、皆、あっちの森で戦闘訓練をしよう、あの辺を支配している方の許可はあるから」

そこで私をちらっと見て来る限り今考えたんだな、別に構わないから頷いておく。

「それじゃあ動きやすくて汚れてもいい戦闘用の服に着替えて集合」



 「・・・皆そろった?それじゃあ訓練内容を説明するよ、皆には私と戦って貰うよ、使う武器は何でもいいけど私が用意したインクを仕込んだペイント武器を使ってね、理由は当たったかどうか解りやすいから、脱落した人はそこに廃村があるからそこで終了を待つように、攻撃の開始は今から十分後、あとここから半径五キロ以上外に行かない事、目印はこれ」

そう言って豊は四方に魔力を込めた矢を放って氷の柱を立てる。

「それじゃあ開始だよ」


 ・・・どうしよう、星華ちゃんに勝てる気がしない。

一応自分は本来の弓を持って居るとは言え、星華ちゃんも弓を選んでいた、それも使いやすく小形でしかも強力な物を。

気配を完全に消す事が出来る彼女には相性の良い武器と言える、そんな事関係無しに殆どの武器を使いこなすのが彼女なのだけど。

「バレバレですよ」

一瞬の間に五人を仕留め、移動を再開する。


 ・・・あとは星華ちゃんだけか、ここまで一度も攻撃を仕掛けてこなかった。

がさりと音がした方を見ると兎だった・・・まずい!

素早く身を伏せると背後から矢が飛んできて今まで立って居た場所を通過していく。

・・・彼女の手段だ、捕まえた野生動物を囮に注意をそらして攻撃を行う、効果的で厄介な方法。

素早く矢を番えて振り返るが、もうすでに気配は消している。


 ・・・罠か、弓を使った発射装置が仕掛けてあった。

飛んで来た矢は弓の近接攻撃で防いだが、追撃で放たれた矢は彼女がそこまで弓に慣れて居ないのが救いになってギリギリ外れた。


 誘導された、気が付くと開けた場所に居て、彼女が弓を構えている、私ほど得意では無いとはいえ、開けた場所で外す腕前ではない。

彼女が矢を放った瞬間私も矢を放ち二人同時に身を躱した。

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