3話 召喚の儀
さて、どのモンスターを召喚するかだが、ゴブリンは論外だ、あの程度では普通の人間にすら負けるだろう、一体10DPでコストは低く繁殖能力も高いので効率は良いのだろうが、私のダンジョンをゴブリンの繁殖場にしたくないし、生理的にあれは受け付けないので却下。
次に吸血蝙蝠だが普通の蝙蝠よりは戦闘能力が高く索敵能力に長けている様だが、それでも戦力とするには不足だろう、一匹50DPで繁殖させれば数も増やせるけど、即戦力にはならないだろう。
そうなると狼が残るが、三種の中ではこれが一番理に適っていると思う。
能力的には野生のものと変わらないが、人の言葉を理解し、ダンジョンマスターの指示を聞く事が出来る程度の能力はある。
・・・決まりだ、狼を召喚しよう、メインメニューのモンスター召喚を選択し出て来た選択肢の欄から狼を選ぶ。
するとメインメニューの右上に表示されて居たDPの値が0になりマスタールームの床に魔方陣が現れて光を放ち出す・・・派手だけど多分ここまで派手である必要ないんだよなぁ。
アザトースの奴、派手好きは演技じゃなくて本性か。
光が止むとそこには立派な狼が一匹・・・・・・寝転んでいびきを搔いていた。
・・・アザトースじゃないから叩いて起こすのは気が引けるし起きるまで私も寝て待とうか。
そう思って狼を抱えて生成された居住用の部屋に入ってみると、そこはマスタールームとさほど変わらない洞窟で、これまたマスタールームと同じように幾つかの燃え尽きない松明が刺さっていた。
まあ私は地面が岩でも寝れるし、砂じゃないだけましと思い寝転んでそっと目を閉じた。
・・・何かが居る、私のお腹の上に何かが乗っている・・・あ、狼だ。
ゆっくり起き上がって私は膝の上に転がり落ちてそれでも起きない狼の背中を撫でる。
やがて狼はゆっくりと目を開いて起き上がると地面に降りて膝を折って跪いたように見えた・・・これ普通は召喚されて直ぐの行動だよね・・・多分。
取り敢えず頭を上げる様に言ったら直ぐに擦り寄って来た、可愛い。
モフモフしながら必要な事を考えると、命令を下す。
「貴方は普段はマスタールームに居なさい、戦闘は私が命令した時に行うように」
戦力の少ない今、戦力を失う訳にはいかない、この世界の基準は知らないけれど基本は私でも戦えるだろう、アザトースはゴブリンでもそこまで弱くないと言っていたし問題はない。
それより先に決める事がある。
狼の名前どうしよう・・・・・・
流石に初めて召喚したんだし名前ぐらい付けてやりたい、だけど本当に考えて居なかった。
日本風の名前は止めておこう、呼びにくい。
最初だからアルファ・・・駄目だそのうちそのシリーズに統一されていく未来しか見えない。
タロットの最初のカードからフール・・・愚かでは無いけれどカードの意味は前向きなどか、少し違うな。
いや何も最初に拘る必要は無いか、なら剛毅かな、獅子を抱きしめる少女の絵のカードで意味は理性と精神的な強さ。
でも多分いつかきっと舌を嚙む、もう日本風の名前でいいや。
「貴方の名前はコロ、よろしくね」
コロ・・・虎狼は頷いた。
それで、召喚は済んだ事だし食料はどうしよう。
DPがあれば料理場の設置もできるようだが、今は無いし結局後回しになるだろう。
・・・ここ山の中だから狩りに行けばいいか。
ダンジョン生成の時に確認したが、集落からはある程度離れていてあまり人は来ない筈だし自然が多いから食料ぐらい調達できそうだ。
最悪侵入者から奪ってもいいし、死体はコロが食べるだろう・・・最終手段私も食べるし。
暇だな、敵が居ないと。
本来は来ない方が良いんだろうけど何もないと暇で暇で仕方ない。
・・・よし、狩りに行こう。




