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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
5章 帝国との戦いに向けて
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38話 伝説の博徒

 カジノがあるのはスラム街の奥、ありきたりだが未許可で行うとすれば当然の場所だろう。

トランクを担いだ私はその扉を開けて中に入る。

・・・驚いたな、予想より充実している、アザトースが広めたのだろうが、トランプ、賽子サイコロ、花札など私が元居た世界で行われていた博打の殆どが行われている。


 「あんたはニュクスと言ったか、ダンジョンマスターが何の用だ」

直ぐに周りに居た男たちが声を掛けて来るが私は薄く笑って答える。

「ここは賭場でしょう?ならやる事は決まっているわ」

「なら俺と勝負しねぇか?」

「ここでは客同士の勝負も出来るの?」

「その通りだぜ」

珍しいな、店側に利益が無い・・・いや客が来る理由にもなるか。

「受けるわ、種目は何でもいい」

「なら勝負は半丁(半丁)だ」

「解ったわ」


 空いていたテーブルに座り、店員に頼めるという事でサイコロを振ってもらう。

半丁は茶碗ほどの大きさのざるに二つサイコロを投げ入れてそれをテーブルに伏せる、そしてカップを持ち上げた時にサイコロの出目の合計が偶数(丁)か奇数(半)かを当てる物だ。

「普通は相手がどちらを選ぶか解るけが、今回は半か丁と書かれた札のどちらかを伏せて置くんだ、客同士の対戦では同じ方を選ばなくなるからな」

それもそうだ、相手と同じ方を選んでは自分に利益が無い。

「そこで同じ方を選んだ場合は合っていれば金は動かず、間違っていれば金はカジノに行く事になっている」

「掛け金は?」

「一回ごとに金貨一枚」

・・・約千円、この世界の物価は元居た世界より少し安いから妥当な線か。


 前置きは措いておいて勝負を始める。

「さあ、半か丁か」

器を伏せてから掛けられたその声お合図に札を出す。

札を出し終わり同時にめくった結果は二人とも丁(偶数)。

そして器が開けられる。

「二六の丁」

当たりだがルール通り儲けは無い。


そうして続き十試合目。

「一六の半」

「凄いなあんた、一度も外してねぇ」

「ありがと、そっちも外したのは二回、かなりの博徒だね」

「まあこれで飯食ってるからな」

私は買った分の金貨二枚を返す。

「ネタバラシをするとイカサマじゃないけど、私は出目が解ってたんだよ、投げ入れる時のサイの向きと方向、強さから私は出目を割り出してた、合計の数字とサイの組み合わせまで手に取るように解る、これは公平じゃない、だから返すよ」

そういうと彼は笑って断った。

「・・・凄い奴だ、その動体視力と空間把握能力は素晴らしいな、俺が賭けた金だ、返してもらう必要はねぇ、どうせ金貨二枚なら直ぐに取り戻せるしな」

「今度は別の種目でも勝負してみたいな」

そう言って私は彼と別れて今度は店との勝負を開始する。


 ・・・約二十分後。

「四光、100点、こいこい・・・五光、150点、終了」

今やってるのは花札のこいこい、とはいえ得点を十倍かつ一点金貨十枚、こい一回に付き勝利時の点二倍の超高レートだが。

「そろった役が、五光150点、花見で一杯50点、月見で一杯で50点、猪鹿蝶50点、こいは四回で計1200点、化け物じゃねぇか」

周りの客の言うとおりだ、最初の手札が良くて助かった、だがこれで終わりだ。

「さあ金貨一万二千枚頂きましょうか」


 「ちょっと待て」

そう声がして振り返ると大男が立っていた。

「なんでしょうか?」

「俺はここの元締めだ、一回俺と勝負しろ」

・・・計画通りだ。

「勿論構いませんよ」

「ポーカーで良いか?」

「当然」


 ポーカーテーブルは私が選んで座る。

「掛け金は青天井、さあ始めようか」

見ると特殊な役には倍率があり、スペードのストレートフラッシュが二倍、一のフォーカードは三倍、ファイブカードが四倍、スペード以外のロイヤルストレートフラッシュが五倍、スペードのロイヤルストレートフラッシュが十倍の様だ。

「開始だ」

配られたカードを一瞬だけ見て私はそれを伏せる。

「ノーチェンジ」

「俺もだ」

その瞬間見ている客に動揺が走る。

確かに珍しいが無いわけではない。

「さて掛け金はお前が決めろ」

その問いに私は微笑んで答えた。

「金貨一万二千枚」

「・・・盛大なブラフだな」

「確かにそう考えるのが妥当ね、でもそれを掛ける位の手札の可能性もある、どうする?」

効果的な方法に悩んだ末に、元締めは答えた。

「受けよう」


 まずは元締めの手札だ。

八のファイブカード、これで悩んでいたとは慎重だな。

「どうだ、お前は」

私は手札を開示する。

「残念だったわね、ロイヤルストレートフラッシュ、スペードよ」

十倍付け、金貨十二万枚、約一億二千万円だ。

「ここは実力主義、払って貰うよ」

「・・・当然だ、だが今ここには十万枚しかない、何とか払う方法はあるか?」

意外と律儀な性格に驚いたが、答えは用意してある。

「この店を貰って国が管理するわ、そして今の従業員には引き続き働いてもらう、貴方も今の立場のままよ、国に認められる事で客も増えるでしょうし、利益はある筈よ」

「なぜそんな事を?」

「当然毎月、収入の二割を国が徴収する、そのぐらいなら大丈夫でしょう?」

このカジノは大きい、二割であっても安定して収入を得る事が出来るだろう。

「・・・感謝する、こいつらの行き先も考えてくれて」

「契約成立ね、一応後で女帝自らが正式な契約を結びに来るからよろしくね」

私はそう言ってカジノを出た。


 外に出て深呼吸をすると、後ろから追いかけて来た元締めに声が掛けられる。

「最後の試合、あれは何をしたんだ?」

ネタバラシを聴きに来たのか。

「なにもしてないよ、ただ高い数字が残っていそうなテーブルにしてはおいたけどね。」

「・・・完全に運か、それにそれまでの賭け事の能力、凄い奴だな」

「ありがとう」

そう言って立ち去ろうとすると声を掛けられる。

「なに?」

「また何時でも来てくれ、俺も博打の腕を磨いておく」

そっと笑いながら答える

「気が向いたらね」

そう言って城へと帰る・・・・・・今度は誰も私を呼び止めはしなかった。

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