34話 龍脈
「・・・あれは?」
「ドラゴン以外に見える」
「それが異常なんですけど」
ドラゴンは普通地面から噴出したエネルギーから出来たりしない、少なくとも卵生の筈だ。
「まあ実際は龍脈だよ」
「・・・え」
龍脈は地核の熱などのエネルギーから生成される概念的なエネルギーらしいが、それはこの近くに流れては居なかった筈だ。
「私のダンジョンがある山の付近に龍脈の本流があったからタロットカード全七十八枚に入れれるだけ取り込んで運んで来た」
龍脈のエネルギーは大きいから普通の道具では運べないのだが。
「分脈の作り方やそれを吸い上げる設備とかの設計図書いて貴女の机に入れといたの見なかった?」
・・・・・・そういえばあったな、あとでしっかり読んでおこうか。
「無駄話は措いておいて終わらせようか」
星華さんが再び魔力を出すと竜が灼熱のブレスを放ち、敵を蹴散らしていく。
「自動制御も考えたけど暴走したら困るし、持って来た龍脈のエネルギーも足りなかったから」
適当な事を言いながらも彼女は竜を操り敵を殲滅していく。
「・・・退却を始めましたね」
「竜の行動を止めるね、流石にこれの制御は疲れる」
そう言うと彼女は敵の逃げる姿をただ眺めている。
「逃がすのですか?」
いつも敵を全滅させようしているから今回もそうだと思ったんですが。
「コロっていう私が訓練したウルフが居るから問題ない、危なくなったら逃げるように言ってるし」
この人が訓練したならそれはウルフの領域を超えているだろう。
「可愛い狼だよ」
「・・・そうですか」
「終わったかな、取り敢えず暫くはやりたくないかな、結構疲れる」
・・・龍脈をあれだけ完璧に制御しておいて結構疲れるで済ますのはどうかと思うが、いつもの事過ぎてもう慣れてしまった。
「大変でしたね」
「私は山を走り回ってただけだから空と豊の二人にはあとでお礼を言っておかないとね」
「そうですね、彼らが居なければ恐らくこれまで持ちこたえられませんでした」
「言っとくけど空は女の子だよ」
・・・え?
「やっぱり気付いて無かったか~まあ仕方ないよね、私も初めて会った時は気付くのに数分かかったから」
気付くの早いな。
「私は相手が女の子だったらすぐに解るよ」
「普通に読心術使わないで下さいよ、あと何なんですかその特殊能力」
「女好きの秘術?」
そんなものは無い・・・多分。
「それじゃあ私は一旦ダンジョンに戻るよ、やる事は多いしね」
彼女がそう言って帰って行くと私は自分の執務室に戻り、龍脈についての報告書を開いた。
ダンジョンに帰って来た、数日前にも帰って来た筈なのに、三週間ほどダンジョンに入っていないかのような久しぶり感だ。
さっさとマスタールームに入ってベットに座り、いつものように出迎えてくれたアリーを膝の上に座らせて抱きながら、メニューを開く。
新しく入っていたポイントは1000DP、今までの残りと合わせて2000ある。
私が保有している分としては多いが、大した量ではない。
ウルフを五体1000DPで召喚してコロと一緒に森に放す、勿論危険があればマスタールームに逃げるように命令しておく。
ウルフも子供を産んで増えるからゆっくりとだが増えていくだろう、因みにコロはオスだった。
吸血蝙蝠もいつの間にか増えて十匹から十五匹になっている。
階層を増やしたいのだが現状ではDPが足りない。
ダンジョンバトルでコアを奪って来たいがそう簡単にはいかないだろう。
取り敢えずダンジョンに戻っているらしい空に聞いてみると昔にマスターが居なくなったダンジョンが点在していて空のダンジョンの近くにもあり、魔物が勝手に湧いてくる魔窟となっている様だ。
「あーそれね、私がダンジョン生成のプログラムを作った時の失敗作だ、あの時元の世界からから適当な人間結構連れて来て実験したんだけどことごとく失敗してねー、魔物召喚の術式が暴走しているんだよ」
「居たのかアザトース」
「まあ私の失敗について言ってたからね、あとコアは普通に残ってるから使っていいよ」
それだけ言って帰って行った、都合のいいやつだ。
廃ダンジョンか、どんな魔物が居るのか気になるな、下手すれば危険な魔物が空のダンジョンを襲う可能性もある、当然空ならなにか仕掛けていると思うが潰しておくべきだろう。
そう、理由付けも出来た所でアリーに呼び掛ける。
「一緒に来る?」
当然と言う様に彼女は頷く、十分に強いから大丈夫だと思うが当然守護はしっかりと行う。
簡単な荷物と食料、アリー用に武器をいくつか用意すると、豊に連絡を入れる。
「星華、どうかした?」
「廃ダンジョンっていう、アザトースのダンジョン生成実験の失敗跡地に行ってコア持ってくるから留守番頼むよ」
「え・・・分かったわ」
「詳しい事は空に聞いて、もしくはアザトース本人」
「・・・星華と違って私にはアザトースがホイホイダンジョンにやっては来ないんだけど」
「私のダンジョンの権利を一部渡しとくわ、その中のメールのアドレスにアザトースのが入ってたから使っていいよ」
そう言って電話を切ると、空のダンジョンにアリーと転移し、廃ダンジョンへと出発した。




