30話 闘技大会1
あれから地獄の訓練を受け、ついに闘技大会開催の日がやって来た。
使われていなかったコロシアムを改装して多くの人が入れるようになっている。
成績上位者は昇級もあるとの事で皆気合が入っている様だ・・・・・・彼女も参加している事を知らずに。
開会式が始まり、私は壇上へと上がる。
「今回は急遽闘技大会をする事となり申し訳ありません。・・・しかし何時でも敵襲に対抗できるようにどんな時でも、戦闘の準備を直ぐに行えるようであってこそ一流ではないでしょうか?」
一息ついて言葉を続ける。
「現在敵勢力は突如壊れた街道の整備を行っているようで安全と思い開催しました。・・・ですが攻め入るにはまだ危険と判断するのが現状です。そして皆さんの能力を把握し、より上を目指してもらう事が今回の目的です。優秀と判断された方は昇級も検討しますので頑張って下さい」
そうして一礼すると歓声が上がり、私は一礼して壇上から降りる。
『次は特殊参加者であるニュクス・ナイトメモリー様から一言頂きます』
彼女が壇上に登るとダンジョンマスターに対する反感と共に彼女の容姿に対する羨望が見て取れた。
「さて何を言おうか、一言・・・ってのは冗談で私も参加します、いつも訓練している人なら私の実力は大体知ってるだろうけど今回は全力とまでは行かなくても結構本気で行くから私と当たった人は天災にでも見舞われたと思って下さい、それでも実力を確かめるのが今回の大会の目的なので皆さん全力を出すように。・・・あと私の参加は明日から始まる最終トーナメントからです、一応言っておきますけどこれは皆さんが予選で私と当たる不運を回避するために女帝マーガレットが取った策ですので私に文句を言わないで下さい、それでは頑張っていきましょう」
・・・・・・場の緊張した空気を完全にぶち壊したついでに殆どの人を唖然とさせた挙句彼女は壇上から降りてマイクを近くに居た人に渡して私と同じ特殊参加者の席に着く。
大会が始まり予選としてコロシアムを何か所かに区切りそこで試合を始める。
「・・・・・・予想以上に勝者側の疲労が大きいですね、何か行いましょうか?」
状況を見た彼女の言葉に頷くと彼女は自分のダンジョンを操作するホログラムの様なメニューを操作していく。
そして数時間して予選が終わると彼女の指示で敗者が集められる。
「これから皆さんにはある物と戦ってもらいます、評価も行うので頑張って下さい、あと下手すると死ぬので気を付けて下さいね」
彼女が言い終わると同時にコロシアム内に数十匹の魔物が解き放たれる。
「野生のゴブリンやウルフ、ヴァンパイアバットです、帝国へでも送り込もうかと捕獲していたのを連れて来て貰いました、あくまで野生なので私でも制御できませんさあさあ頑張って下さい」
・・・・・・鬼だ、観客席より上の場所に居る弓を持った人影を見る限り観客を守るつもりはあるようだが兵士を守るつもりはなさそうだ。
「少々やり過ぎでは?」
「実際の戦場では何が起こるか解りません、現に前もジャイアントが現れました、それにあの程度の魔物ぐらい処理できる実力は身に着けてもらわなければ困ります」
「あーあいつらにはきついかもな、普段人相手の訓練はやってるけど魔物相手の訓練はしてねぇし」
軍務尚書の言葉に私は頷く。
「確かに必要かもしれませんが死者を出すわけには・・・」
「危険と判断すれば私が排除します」
それに頷いて私はコロシアム内に視線を移す。
「・・・なんだか普通よりも強いように感じるのですが気のせいでしょうか?」
彼女にそう言うと軽くいなされる。
「幾らなんでもあの程度の魔物では弱すぎるでしょう?私はダンジョンマスターですよ」
そう言って彼女はタロットカードを一枚取り出す。
「ある程度は強化していますよ、多少ですが」
・・・皆が苦戦している理由が分かった、彼女にとっては多少でも彼らにとってはかなりの強化なのでしょう、強いが故に基準がおかしいのかもしれない。
「少しやり過ぎましたね、これぐらいで良いかな。」
そう言って彼女はカードを魔物に向ける、すると魔物一体一体から魔力が回収され、カードに吸い込まれていく。
「もう終わりにしましょう、十分実力は解りました」
彼女は観客席から飛び降りると魔物を殲滅しマイクを手に取る。
「皆さんの実力は解りました、それでは次へ進めますがこの中で自信のある方は私に挑んで来て頂いて結構です」
挑発的な彼女のその言葉に全員が残り彼女は全員同時で構わないと言い・・・そして圧勝した。
そうして予選が終わり、明日のトーナメントに向けて休息を取るように宣言すると今日は解散した。




