2話 ダンジョンのすゝめ
取り敢えず地面にあぐらをかいて渡された本の表紙を見る。
ダンジョンのすゝめ……何処かで見たぞこの感じのタイトル、あれだ、ええと……そう、福沢諭吉の学問のすゝめだ。
一ページ目には試練があるとだけが大きな文字で書かれているだけだった。
それから百ページは目次、その次からが本題だった。
なになに、このダンジョンのすゝめは絶対に破損せず、捨てても貴女の手元に自動で戻ってきます……これあれだ、持てるアイテムの種類に制限があるゲームでエンディングまでインベントリの枠を一つ占領する面倒な奴だ。
次、貴女達はダンジョンマスターとなってダンジョンを造り侵入者や他のダンジョンマスターと戦うことになりますが、基本ルールは無いので適当に遊んだらいいよ……最後軽いな。
次、ダンジョンを生成、改造、モンスターの召喚などにはDP(Factors that make up the dungeon)を使います……ダンジョンを構成する因子ってこれ読める奴少ないだろ。
次、ダンジョンはマスタールームと迷宮に分かれます、迷宮は文字通りで、マスタールームはモンスターの召喚とダンジョンの構築を行え、初期で居住用の六畳程度の部屋が一つ配置されます……結構ありがたい。
次、DPは魔力を概念的エネルギーに変換したもので、ダンジョン内で殺した生物、魔法生物を還元する事で手に入る、これは基本的に自動で行われるため覚える必要は無い……これ考えながら書いてるな、書く順番が適当な事から考えて多分そうだ。
次、マスタールームにはダンジョンコアが生成され、それが敵対者によってダンジョンの外へ一か月以上持ち出された時、ダンジョンは消滅する。
「ここは多分迷宮が存在しない状態のマスタールームだから何処かに……これか」
辺りを見回すと漆黒に輝くこぶし位の大きさのカットされた宝石が石で出来た台座に置かれている。
持ち上げてみると意外と軽く、五キロぐらいだろう。
さて、ダンジョンを創るとするか、その方法はと……。
書かれていた通りにコアに一滴自分の血を垂らすと私の遺伝子がコアに登録され、コアに手を翳すとホログラムのメインメニューが現れる。
取り敢えずはダンジョン生成しか出来ない様なのでそれを選ぶと、場所を選ぶ画面が出て来たので、都市からは離れているが、集落があまり遠くない位置にある鉱山を選んでダンジョンを生成する、ダンジョンの構造は少し複雑で、道が広い所と狭い所のある迷路を描いて生成した。
暫くの間地響きがあってそれが止むとアザトースがやって来た。
「ヤッホー速いね、他の皆はダンジョンのすゝめをまだ半分も読めてないよ」
そらそうだろうな。
「取り敢えずダンジョンのすゝめに書き忘れたスキルと魔法について説明するよ。
魔法だけど、要するに魔力を使ってなんかする事だよ、色々あるから説明は省く。
スキルだけど技だね、星華がゴブリンにやったみたいなあれだね。
あとでダンジョンのすゝめに付け足しておくから」
「魔法はどうやったら使える?」
「知りたい?知りたいよねぇ~」
「やっぱりいいや」
「いや、聞いて」
「で、なに?」
「まあ、頑張ってたら使えるようにしてあげるから、神格とかもあげちゃうし」
そう言ってアザトースは何処かへ去って行った。
……取り敢えずダンジョンの強化だね、今使えるDPは100か……あ、これゴブリンのだ。
現在ダンジョン関連で出来る事は罠の配置かモンスターの召喚だね、どちらも大した事は出来ないだろうけど……
罠は……やめておこう、私の戦闘能力を考えたら罠を使う方が効率が悪い。
となるとモンスターの召喚だね、メニューから確認すると狼、吸血蝙蝠、子鬼が表示されている。
ラインナップはダンジョンの成長具合とマスターによって変わるらしいから狼と蝙蝠は私に合わせた物でゴブリンは全てのダンジョンに固定だろう。
さて、答えは決まっている、DP的に一匹出したら終わりだが、他に選択肢は無い、さあ召喚だ。




