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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
15章 旧都
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285話 旧都5

 画廊は既に人払いと封鎖が施され、入り口に張られた黄色と黒の縄には立ち入り禁止の札が下がっていた。

「僅かだが冷気が中から流れてきているな……強めに空調を入れていると言われればそれまでだが、内外での温度の差は空間異常の指標の一つではある……ただ、大きく空間が歪んでいるようには見えないな。外観の変異は無く、内部空間のみの拡張があったとしても私の目ならひずみが見えるだろうがそれも無い」

 内部に踏み入る前に外かな眺める私の背後に一人の女性が降り立った。

星華せいか様……貴女様も来られたのですね」

カラスか、久しぶりに戻ったが面倒事の様だな」

 戦力としては炎羅えんらより遥かに優秀ではあるが、不死性を持たない以上、彼女が伝令役として残るのはいつもの事だ……彼女の逆鱗に触れる要素が無ければの話だが。


「報告を頼む」

「ええ、画廊の奥にある鏡が異空間への門になっているようで、通常通り入口の安全を確認した後に一度戻る手筈でしたが、帰還せず、追加で半刻程待機した後、支援を要請しました」

「そうか」

 空間の入口が一方通行である事は珍しくはない、だから閉じた空間の扉をこじ開ける装備を持っている筈だが……それでも戻れないという事は、空間が強固に閉ざされていて装備で開けないか、単純に身動きが出来ない状態かのいずれかだろう……まあ、彼女なら死ぬ事はない。


「鏡を叩き割れば無力化は出来るだろうが……空間もろとも崩壊しては炎羅でも流石に戻れないだろうな、異空間に入って中核を滅するしかなさそうだ」

「そうね……ここは私と星華の二人で入りましょう、私ならどこからでも出口を作れるし、敵は星華が全部叩きのめしてくれるでしょうから」

 ましろの言葉に私も頷く。

「ああ、この先は危険だ、鴉はルナと共に車で待機してくれ。危険は無いと思うが、異常な実体が中から出てくる可能性が無いとは言えない、注意しておくように」

「了解いたしました、何があろうとお守りいたします」

 常識人だし、何より子供を大事にする人だ、白よりよほど信用出来る。




 画廊に入るとその時点で空気が違うのが分かる、正体不明の気配や想いのようなものが空間に満たされ、中に入った者を捕らえて自らを構成する一部へと塗り替えようとしている。

「我々はともかく、心の形を顕現できない一般人は長く持たないだろうな」

「まだ異界には入ってないのにここまで空間を侵食しているとなると……放置すれば遠からず画廊の外にまで広がっていくでしょうね」

 見た目はまともでもその状態は、崩壊の一歩手前といった所だろう、新たに人を飲み込めないように退避させたおかげで、その力が増す速度は下がっているものの、一月は持たないだろう。


 周りの展示物を眺めると環や四季、生と死を題材にしたように見える作品が多く飾られている。

「芸術は不得手ではあるが……これは輪廻や循環、復活を主軸に据えているのか?」

 こういった物から込められた感情を読み取るのが得意な者も居るには居るが、あの子は我々の直接の庇護下の外で生活する事を選んでいるから……まあ、余程難解な者があれば後日見せてみるくらいで良いだろう、訪ねる口実くらいにはなるだろう。

「私もさほど芸術に明るい方じゃないけど……これは寧ろ輪廻や循環からの離脱を目指しているように見えるわね……」

「不老永生、涅槃……」

「そのどちらでも無いかもしれないわね、鏡の謳い文句の幸せになれるって意味も分からないし」

「答えは鏡の中という事か」

「鏡の中に不思議の国でも広がっているのかしらね」

「屍山血河かもしれないな」

 どちらにせよ入ってみるしかないか。


 画廊の奥に進むと華美な装飾がされた巨大な鏡が荘厳に佇んでおり、静かな鳴動を感じる。

 二人でその目の前に立つとその音はより強く響き、次の瞬間世界が歪んだ。

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