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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
15章 旧都
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283話 旧都3

歯身

 異形と化した者が出たと聞き、情報を求める。

「状況を教えてくれ、未帰還者が出たと言ったが……ましろが急いていない所を見るに、炎羅えんらだな」

 私の言葉に白も頷く。

「そう、あの子に任せたのだけど……上手くは行かなかったみたい」

「彼女の能力は厄介ではあるが、搦め手に弱い所がある。 その上、戦闘技能もさほど高くは無いから……」

 能力に胡坐をかかず、もう少し鍛錬に身を入れてくれれば良いのだけどな……。


 そう話しているとルナが横から緊張したように声を出す。

「その……エンラという方が未帰還との事ですが……急がなくてもよいのですか?」

「問題は無い、彼女は死なないからな」

「そう不死、不滅、腕を斬り落としても、首が捥げても、心臓がつぶれても再生する異常な生命力……あの子はただ『死にたくない』と願ったから、死からも見放された」

「不死……」

 ……生きたいと願う事と死にたくないと願う事は一見同じに見えて真逆を向いている。 生きたいと願うものは自身をより大きなものへと変え続ける。木が育ち、枝葉を広げるように生を見つめ、生き続けるようとする。 一方、死にたくないと願う者はただ死を否定する、変化を拒み、今が変わらず永遠に続く事を求め、同じであろうとし続ける。

「便利な能力ではある……ただ本人の能力が只人だから檻に入れられれば出るのは難しいだろうね」

 もっとも、自身の痛みを無視して行動出来るから、手足を一本斬り落として開放される程度の拘束なら脱出してしまうのだが……道具も無く手足を落とす能力は無い。



 その時、扉を叩く音が聞こえた

糸食いとはみでございます」

「入って」

 白の言葉に扉が開き、黒の着物を着た女性が入ってくる。

星華せいか様……お帰りになられたのですね」

「ああ……悪いが、また暫く開ける事になりそうだ」

「構いませんとも、ただ、貴女様に救われた者達は皆、貴女様を想っております事を忘れないで頂きたい」

「……すまない」


 言いたい事を告げ、一拍おいて、糸食は私に再び声をかける。

「それで、私を呼ばれたのは何用でしょうか?」

「この子の為の着物を用意して欲しい」

 そう言ってルナを指すと、糸食の目がルナに向けられる。

「この子は……また……」

「私が籠から出した子だ、身を守る衣くらいは用意すべきだろうから」

「分かりました、貴女がそうする事が良いと考えられたのですから、私はそれに従いましょう」

 心の糸で織った衣を纏う事は、希釈された他者の自我で己を覆う事に等しい、個としての情報は持たないにしろ、強い想いはそれを纏う者を浸食し、飲み込んでしまう……だが、彼女はそれを受けられるだろうし、それが必要になるだろうから。


 糸食は一通りの採寸をしてから下がっていった、今の問題を解決して戻ってくる頃には仕立て終わっているだろう。

「……さて、異形退治に向かうとしよう」

「そうね……久しぶりに私も行きましょうか」

 そう言って立ち上がる白を制しようとする。

「面倒事になるだろうが来るのか?」

「ええ、貴女と一緒なら楽しいでしょうから」

 白が音も無く扉を開くと、木柵で人が落ちないようにしただけの開けた展望台が現れる。

「さあ、行きましょう、久しぶりに羽を広げて飛べそうね」

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