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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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279話 異形の唄11

 騎士の大袈裟な鎧が崩れ、中から子供の姿が現れる。

 意識はあるものの、瞳は虚ろで何かを映してはいない。

「僕の……何が……」

 うわごとの様に吐き出される、彼の呟きの続きを狐の姿から戻ったとよが引き継ぐ。

「間違っていたのか……ねぇ……正しくはあったよ、君の視線の中の世界ならね……でも、あの子が何を望んでいるのか、何を想ったのか、それを知ろうともしないであの子の幸福を定義しようとした……それはちょっと傲慢が過ぎるんじゃないかな?」

 以前ならその言葉に反論していたであろうが、もはやその気力も体力も無い彼に、その言葉はゆっくりと染み込んでいった。


「相手の為……その言葉に包んだ自己愛は、向けられる相手からすれば酷く醜く見えるものだろうね……自分がこれだけ想いを捧げたのだから、相手も同じだけ返してくれるだろうという無自覚な期待……相手が優しければあの人の様に返してくれるかもしれないけど……それで相手が幸せになれる訳じゃないから……」

 豊は少年を見ながら、それよりも遠くを見つめていた、自身が愛した人の残影を。

(あの人は……ずっと並び立つ相手を望んでいた……後ろを付いてくる人なんかじゃなく、隣や正面に立ってくれる存在を……でも彼女はどうしようもなく最強で、人々は彼女の背に守られるばかりで、怪物達は彼女の道を塞ぐには力不足だったから……)

 そこまで考えて、自身の考えを振り払う。


「だから……ありきたりな言葉だけど、あなたも向き合ってみればいい。あの子が何を望むか私は知らないけど、どうせそうする機会は来るから……あの人が何を計画してるにしろ、こっちが一切知らないうちに詰みの状態に持ち込んでは来ない……絶対に私達には機会が与えられる。彼女の計画に従うか、それとも抗うか、それを選択させてくれる……あの子は先に付く側を決めたけど、話をする事はできる。」

 豊は確信していた、星華せいかが僅かに見せた自身の望み、それを考えれば、間違いなく自分達が彼女に向き合う事が出来ると。

 彼女が一瞬だけ見せた最強の動き、それはここまで登って来いという挑戦だったから。


「僕は、弱いですね……だから、彼女と最低限向き合えるだけの強さを得ないと……その力で彼女と敵対する事になるかもしれないけど、それで良いんでしょうか」

 それまで静かにしていた天音あまねがそれに答えた。

「敵対する事それがどちらかの死を意味するわけではないでしょう、最終的な着地点を得るために必要な過程で、そうするべきだと信じられるなら、それを信じなさい。」

「はい……」




 その光景を豊は一歩下がって見ていた。

(そう、あの人の望みの為に必要だから……私は強くならないといけない……短期間でそれを成すのは簡単じゃないけど……そうするんだ、どんな手を使っても)

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