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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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269話 異形の唄1

 楔を破壊し、城壁へと撤退したマーガレットが状況を確認すると、大勢は決した事は確認された、城郭都市である国を囲う結界は力を取り戻しており、防衛設備の再稼働には時間がかかるものの、守りが確立されていれば、外の敵はゆっくりと殲滅すれば良かった。

「それでは既に指示は出ているものと思いますが、これまで侵入を防いでいた者は全員、内部に入り込んだ魔物の掃討要員の増員として割り当てます……徹底的に殲滅し、隠れた魔物の一匹も残さぬよう排除を行う様に」

 現場判断ではない正式な指示を出し、マーガレットは一息ついた。


「さて、問題は……」

「ええ、あちらの二人ですね」

 マーガレットの呟きに橘花きっかが答える、その視線の先は戦場となっている城壁の外に現れた二つの強力な存在だ。


 一つは巨大な植物の塊だ、無数の蔦や枝、根が絡まり合って繭の様相を呈しており、その内部がどうなっているかは分からない、ただ無数の蔓が周囲の魔物やその死体を絡め捕り、繭の中へと引きずり込んでいる。

 もう一つは機械で出来た天使だ、鋼の翼からは炎を噴出して短時間浮き上がる事が出来るようで、右手の鉤爪と左手の剣で近寄ってくる魔物を切り裂いている……だが、その姿は戦っているというよりも近付いてくる敵に対して、機械的に反応して動いているようにも見える。


「飲まれましたか……やはりそれがあの人の目的なのでしょうね」

「失礼は承知の上なのですが……陛下のそれは違うのでしょうか」

 橘花の視線は変異したマーガレットの衣装に向けられている、左腕にのみ現れた振袖の様な布は、服装の不均衡さにも関わらず邪魔にはなっていない。

「分かりませんが……本質は同じものなのでしょう、異形と化した者が鎮静化され人型に戻っても得た力は残ります、ただ私は運よく暴走を挟まずに異形の力を得たのでしょう」

 星華せいか、あるいは彼女の残した知識を読み漁っているとよならば具体的な事を示せたかもしれないが、今はそれ以上の情報は必要では無かった。


「問題は……どうあの二人を鎮静化するのかでしょうね」

「はい、人が足りません、恥ずかしながら私では戦力外でしょうから」

 そう言った時、壁の外の遥か遠くから一つの巨大な影が現れた。

 その影は四つ足の獣の様で魔物の群れを歯牙にもかけず、悠々とこちらに向かって走ってくる。 一度、足の踏み場もない数の魔物に取り囲まれるも、一声軽く吠えると突如として上空から光を反射して輝く鋭い結晶が周囲に降り注ぎ、悉くを撃ち滅ぼした。


 獣は一瞬で城壁までの距離を詰め、一気に飛び上がる、そのまま外敵を弾く結界を通り抜けてマーガレットの前に着地し、3つの人影へと姿を変えた。

「貴女でしたか……豊さん、それと……後ろのお二人は大丈夫ですか」

「明らかに異常な魔力の乱れを検知したから救援に来たよ……後ろの天音あまねちゃんと輝夜かぐやさんは、私の背中に乗って来たんだけど……狐って騎乗には向いてないし、鞍もなかったからね……」

 ある程度持ち直した様子の天音が言葉を引き継ぐ。

「主となる襲撃自体の対処には間に合いませんでしたが、異形に堕ちた者の鎮圧にならば協力できるようですね、あの様子では放っておいても魔物にやられる事は無いでしょうが、万が一という事もあります、早急に制圧を開始しましょう」

 その言葉にその場に居た全員が頷いた。

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