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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
268/292

262話 笑顔の伝道師2

 マーガレット、うつほ、セイの三人は口数が少ないながらも、周囲に気を配りながら夜の街を歩く。

 効率を考えれば手分けした方が良いのだが、今回の捜索目標の()はどこに現れるかも分からず、何時消滅するかも不明な存在の為、武力による対処が必要な場合を想定し一緒に行動している。 また、相手の行動原理も分からず、精神汚染や認識改竄の可能性もある為、多くの人手を割いた行動を起こす事も危険だった。

「セイさん、貴女が扉を発見した場所に共通点などはありましたか」

 マーガレットの言葉に少し考えたセイが口を動かさず、思考で語る。

『ある程度人が居る場所、時間の問題で人通りは少なくても民家のある通り、公園の広場、大通りの途中……人に直接被害が無いのに噂になっているから、多分()()()()()を求めてる』

「見られる事……」

「芸術、演劇なんかを見せようとしてるんやろか、死体の血肉で絵画でも描いてたりしてな」

 空の想像に顔をしかめたマーガレットが返す。

「特殊な能力を持って居ないとしても、精神に影響がありそうな絵ですね」

『でも、積極的に人間を取り込んだりはしてないよね、椅子に縛り付けてでも作品を見せつけてもおかしくないのに』

「誰かに自分を見て欲しいと思っとるくせに、相手に見られ、見定められるのを恐れる……人間なんぞそんなもんやろ」


 静寂に疲れたように、ただ暇に任せて話しながら先に進む内に、それは現れた。

 三人を招き入れるように目の前に現れ、それでいて拒絶するかのように閉じられた両開きの扉、中からは何も聞こえてこないが、明らかに異質な空気を放っている。

「どうやら、向こうからお出ましのようやな」

「……誘われているのでしょうね」

『扉を破壊すれば……消滅と出現を繰り返すなら無意味かな』

 三者三様の反応ではあるが、扉が出てきた以上、やることは一つだ。


 扉を開け中に入ると、中はサーカステントの様相であり、客席は全て空席で、ライトの点いていない中央の舞台に人影が見える。

 三人の視線が舞台に向くと、急にスポットライトが点灯し、舞台に居た一人の道化師を照らし出す。

「ようこそ! 我らが笑顔のサーカスへ! 今は暗い顔の皆さんも、出る時にはきっと笑顔になれるでしょう!」

 その声と共に空間が捩じれ、変質していく、客席には木製の人形が隙間なく座り、三人は舞台の上に立っていることに気付く。

「今宵はゲストの皆様にも公演に参加していただきましょう! どうか、どこよりも刺激的で、暴力的で、蠱惑的な演目を皆様の手で完成させ、そして楽しく笑ってくださいませ!」

 人形による乾いた拍手が響き渡り、無数の気配が周囲に蠢く。


 各々の武器を構えた三人の前に、奇怪な動きをする笑顔の仮面をつけた人型の存在が現れる、それらは剣、槍、ナイフなどを持って居るが、その構えは明らかに大げさなものであり、演劇のようにも見える。

「こいつら……多分盗まれた死体や」

「なんてことを……」

 空とマーガレットの囁きに道化師が反応した。

「おや、盗んだとは人聞きが悪いですねぇ! 笑う事が出来なくなった人たちを、再び笑えるようにしてあげたのですよ!」


 道化師が大げさな身振りで両手を広げて言った。

「さあ、公演を始めましょう!」

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