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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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259話 夢の終わり

 空間が悲鳴を上げるように軋み始める。

 領域の主が最早その領域を必要としていないのだから、それに答える様に崩れ、消えて行く。

 崩壊は主である彼女から遠い場所から始まり、最後には全てを飲み込んで虚無へと還るだろう……この空間にいる人物も全て巻き込んで。


 そう星華せいかが語れば、紅蓮ぐれんが言葉を返す。

「おい、それじゃあどうやって戻れって言うんだ」

 そう言って、入って来た扉に目を向ける紅蓮に、星華は笑う。

「その道は最早出口では無いだろうね、領域の主が死んだ場合はもう少し形を留めるのだが、今回は主に必要とされて居ないのだから崩壊も早い……だが、忘れている事があるだろう」

 輝夜かぐやの頭に手を伸ばし、その髪を梳いて星華は言葉を続ける。

「この空間は君の領域だ、今は必要が無いが、その気になればまた作り上げる事も容易いし、その形を調整する事も簡単だ……まあ、取り敢えずは()を作っておくれ」

 そう言われて輝夜は何もない空間に手を伸ばす。

「心の扉を開ければそこは異世界、どこにでも行ける扉はここにある」


 木製の扉が最初からそこにあったかのようにそこに現れる、簡単な木枠と扉だけの黒い扉だ、反対に回り込んでみても、ちゃんと扉はそこにあり、どこかに繋がっているようには見えない。

「こんなもので出れるのか」

 紅蓮の言葉に、星華が苦笑しながら答える。

「これはただの扉さ、だけど、この空間の支配者は輝夜で、この中では彼女が決めた法則に全てが従う」

 それに(こた)えるように輝夜が扉を開くと、そこには外の景色が映し出される。

「故に、ここが出口なのさ」

 そう言って星華が扉を潜り、輝夜が続く、最後に紅蓮が通り抜け、扉は消滅した。


 すっかり日が落ち、月に照らされた草原に、二人と一匹の影が映し出される。

「星華さん……その姿が気に入ったの」

「気に入っては居るよ、まあ、とよに直接見つからない様にする事が目的だけどね……暗躍してるのに会ってしまったら干渉したくなる」

 そう言う彼女の姿は黒猫で、声も複数の人が同時に声を出すような不思議なものに戻っている。

「てめぇは何を企んでやがる」

「ただ人々が心の底から自分を知り、それをそのまま曝け出せるように……何時(いつ)までも私が見て守れる世界じゃないから、自分の身を自分で守れるように、それだけだよ」

 そう言った黒猫に、紅蓮が大剣を向ける。

「その結果がこの様か、化け物共が我が物顔で歩き回るのが、てめぇが望む世界ってか」

「表で隠しつつも我等に頼り、異形を抱えて闇と共に歩んだ私達の世界とは違い。長きに渡り強制的に停滞されていたんだ、それまで進む力を無理に止めていた歯車が一気に動き出し、封じ込められていた心が爆発しているのさ……今までは向き合う事無く目を背けて居られたが、これからはそうはいかない、それだけさ」


 黒猫は背を向け、歩き去ろうとする。

「星華さん、貴女と会った事は豊さんにも報告しますよ」

 少しの間、足を止め、黒猫は答える。

「当然、そうするだろうね、彼女に知られても構わない、ただ私が会う訳にはいかないだけだからね……それと、私が本体ではないとは伝えておいてくれ、所詮は分霊体、いずれ本体に戻って一つになる存在だ」

「死ぬ……という事なの」

「いや、戻るだけさ、ただ同時に二つの場所に居る為の術だからね、そう言う意味ではどちらも本体ではある、ただ今ここにいる私の方が小さい魂魄であるというだけさ……戻っても消える訳じゃ無い、理解するのは難しいだろうけどね」

 そう言って今度こそ黒猫は闇に溶けて消えて行った。


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