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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
4章 第二期ダンジョンバトル
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25話 自由帝3

 「お前如きに俺が倒せるかな」

相手をなめくさった言葉とは裏腹にその動きは完全に本気だ。

私も刀を右手に握る。

その瞬間に喉元へ迫って来たサーベルをかろうじ躱し、刀を払う。

「そんな攻撃じゃあ俺には届かねぇよ」

軽々と受け止めて言われるが仕方ない、このままでは私は死ぬだろう。

彼女が居てくれたらと思い、はっとする。

「まさか彼女のダンジョンに・・・」

「ああ、傭兵を送ったよ、あいつを引き剥がす為にな・・・何故笑っている?」

「安心したのよ、それなら私たちが負ける事はない」

彼女がそんな小細工に気付かない筈が無い、逆にただの冒険者の方が都合が悪かった、気付いたなら直ぐにこちらに向かうだろうから。

「送ったのは百人ほどだ、幾らあいつが強くても直ぐには破れねぇよ」

その言葉に私は現実に引き戻される、帰ってくるまでは私がこいつの相手をしなければならないのだ。


 「死にな、【帝国技法・壱】」

サーベルの先端から突如飛び出した太い針を寸前の処で躱す。

「流石にこんな手は通用しねぇか」

そう言うと軍務尚書は一気に切りかかってくる。

それを受け流し、避けて何とか反撃の気配を探る。


 「おっと、こっちの仲間が来たようだ」

言われて遠くを見ると軍勢が迫ってくるのが見える。

今までの比じゃない数だ、数万は居る、その上攻城兵器も点在しているのが見て取れる。

「この城の防衛設備は動かないようにしておいた、勝てる訳がねぇよ」

・・・まだだ、ここでこいつは必ず屠る。

彼女に渡されたものをそっと取り出す。

一枚の絵札だがかなりの魔力が籠められているのがありありと解る。

それは戦車の絵柄、チャリオッツと彼女は言っていた。

教えて貰った意味は勝利、奮闘、野望の達成など・・・今私に必要とされているものだ.

そこに込められた魔力を発動させる、これでも互角だろうが構わない。


 一気に攻撃を仕掛けて反撃を許さない。

一向に効いている気配が無いがそれでも構わない。

「くらいな」

その呟きにやばいと思った時には遅かった。

凄まじい爆発が私を包み込む。

吹き飛ばされ屋上の鉄柵に全身を打ち付けられて息が詰まる。

「流石に危なかったな、あいつの魔力での強化か、だがこれで終わりだ」

軍務尚書は小銃を取り出して狙いを定める。

これで終わりだと思い目を閉じると風を切る音が聞こえ、続いて硬い物が地面に落ちる音が聞こえて目を開く。


 「貴女が女帝ですか?星華ちゃんの命令ですからね、守りますよ」

何処からともなく現れた弓を持った彼女と同じぐらいの年の少女の言葉に彼女に渡された手紙の内容を思い出す。

言葉では聞かれている可能性があるから文字にしたとのことだが、彼女の本名は夜神星華との事で、その事は仲間しか知らないからその名前を知っている者は基本信用していいとの事だった。

少女は弓を構えると空中から作り出した氷の矢を番える。

「貴女の裏切りは最初から解っていたそうです、大人しく投降しなさい」

「断る、死ね」

そう言って切りかかるが少女は何故か弓を使わずに水平蹴りを鳩尾みぞおちに打ち込んで動けなくさせて縛り上げた。


 「貴女は?」

「私は稲神豊、星華ちゃんの奴隷です」

少女の言葉に驚いていると彼女はそっと笑う。

「何か問題でも?私もダンジョンマスターで戦いを挑み負けて奴隷になりました」

少女の話ではダンジョンマスター同士の戦いで勝てば相手から好きな物を奪えるとの事だ。

「貴女はそれでいいの?」

「構いませんよ、私は彼女が好きですから、例え家畜だとしても彼女と一緒に居れれば良いです」

その答えにさらに唖然としていると彼女は笑みを浮かべた。


 「良いのですか?外の軍勢の事は」

その言葉に気付いて外を見ると問題ない事を悟る。

彼女が立っていたからだ。

単身で奥に乗り込んでいくその姿は戦いの女神の様だった。

「星華ちゃんにとっては私たちは足手まといだからね・・・でも手伝いはしますよ」

そう言って彼女は弓を番えると放つ。

それは的確に敵の司令官の首を打ち抜いた。

「文句言われそうだけど、雑魚だから構わないよね」

「あそこまで数キロはありますが・・・」

「私の弓は強弓ですので、持ってみますか?刃が付いてるので注意してね」

渡された弓をもって驚く、かなりの重量だ、刃が付いてる事もあるのだろうが普通の弓の数倍はある。

そして借りた矢を番えようとしてさらに驚く、強弓どころの話ではない、鋼の糸でも張ってるのかと思うほどに張りが強いのだ。

「まあ普通の人間にはそう簡単には扱えないでしょうね、至近距離でこれを食らったら肉が砕け散ります、星華ちゃんは至近距離で撃ったのを軽くはじいたけどあれは異常だよ」


 ふと戦場の方を見ると冥府の魔物が暴れているように見えた。

瘴気の様な物が噴出し、彼女を包み込んでドレスをより豪華にしている。

「これは面倒になったね、雑魚ばっかりで飽きたのかな」

なにかスキルを使ったと思うと周りに居たすべての兵が切り伏せられた。

「暫く残党を狩ってから帰ってくるからそれまで守っておくように言われています」

「そう、ところで防衛設備は大丈夫でしょうか?」

ああ、それならと少女は口を開く。

「星華ちゃんと同盟を結んでいるダンジョンマスターが一人来ています、こっちの技術を学ぶために誘われたらしいけどその手の事には強いから大丈夫だと思うよ」

そうですかと呟いて倒れた軍務尚書を見る。

「彼は良く働いていたのですけど、残念です」

「星華ちゃんなら色々な情報を掴んでくれると思うよ、拷問なら十八番だし」

その言葉に頷いて空を仰ぐ・・・・・・今は彼女を待つしかないか。


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