表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
257/292

251話 夜の光4

 二振りの武器が交わった刹那、手から伝わって来たその衝撃に驚く……一撃が重い、単純な質量では私の武器の方が圧倒的に上なのだが、それすらも容易に打ち返す力を感じる。

 恐らくは変異の影響なのだろう、人型とはいえその姿には異形の面影が残り、対峙するその姿に隙は無い。

 力、その一点を見据え、異形の姿を得た彼女は強く……そして揺らぐ事は無い、あの人の言葉があれば揺らぐのかも知れないが、それがどんな選択であれ、あの人が彼女の選んだ答えを否定することは無いだろう。


「獣の姿は暴れるには便利だけど、やっぱり星華せいかちゃんに習った技量を扱える人型の方が戦いの価値を感じれるね」

 彼女は抜き放った脇差しを持った右手を下げ、自然体で立ちながらそう語る。

「重く、鋭い剣、そして大抵の武器を相手にして対処する技術……」

「そう、本当のあの人の剣は更に速く、致命的で、秀麗なのだけど、私はまだそこには辿り着けていないの……辿り着けるのかどうかすらも分からない」

 強い事を目指した故に、とても近くにある余りにも高い頂点に手を届かせる自信は無く、それでも手を伸ばす事を選んだ彼女は、静かに目を閉じて語る。

「でも、今はその高さに目を眩ませているよりも、足元を見て踏み出すべきなんだろうね……さて、もう少しだけ相手をしてもらうよ」

 そして彼女は再び動く。


 静かな空間に金属音が幾度も響く、武器の重みと度重なる衝撃によって疲労は積み重なり、これ以上は続かないであろう事は容易に想像できた。

 ……だが、それでは駄目だ、防戦一方で押し切られるようでは彼女に示しが付かない。

 一歩、踏み出し、大きく武器を振るう、形状が大きな釘である私の武器は、その鋭い先端以外に切れる部分は無いけれど、その重さと長さに価値がある。

 彼女は素早く脇差しで私の一閃を受ける……この瞬間だ、武器が触れ合う瞬間、力を掛ける方向を変え、相手の剣を巻き取るように下へと圧を掛ける。

「あっ」

 彼女の手から脇差が落ちた……本来は剣同士で使う技だ、短槍にも似た動きはあるが、全体が金属で出来た私の武器で行う動きではない、だがそれ故に通用した。

 そのまま動く、拾えないように脇差刃を踏み、武器の切っ先を向けた。


「……これで十分ですか」

 そう尋ねると、彼女はそっと笑った。

「そうだね、私は素手で戦う事も出来るけど……それでも油断したのは事実だ、この辺で終わりにしようか」

 そう言ってゆっくりと脇差しを拾い上げ、軽く土を拭うと鞘へと納める。

「さあ、帰ろうか」

「そうですね、今は休みたいです」

 正直に言うと、彼女は楽しそうに口を開く。

天音あまねちゃんも私みたいに自分の望む姿を得られるかな」

「どうでしょうね、私は所詮偽善者ですから」

 そう答えるが、別にそれで良かった、ただの自己満足であっても自分で選択した事には変わりないのだから、あの人の掲げた光に従う事は無くとも、それが私だから。

 私は帰る場所に向かってゆっくりと歩き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ