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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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250話 夜の光3

 私の目の前で巨大な狐へと変化したとよさんから、優しく語る声が聞こえる。

「手加減は要らない……この体は今までよりもずっと丈夫で再生もできるから……遠慮なんてしないで殺す気で来て……じゃないと……勢い余って殺しちゃうから」

 言い終わるな否やその巨躯が迫り、鋭い爪が右から迫る。咄嗟に振り上げた大釘で防ぐが、圧倒的な質量に跳ね飛ばされ、空中で地面に大釘を叩きつけて固定し、勢いを殺して構えなおす。

「魔力……収束……解放」

 獣の口から洩れる声と共に、複数ある尾の内の一本が持ち上がり、巨大な氷柱つららを生成してこちらに向かって射出する。

 すぐさま横に跳ね飛んで躱すが、地面に当たる瞬間、氷柱が炸裂して辺り一面に鋭利な氷片を撒き散らす。

 視界の端で巨躯が再び迫るのを確認し、大釘の放電能力を開放して周囲一帯の氷片を蒸発させつつ、狐に向かって雷撃を飛ばす……それが命中するその瞬間、狐が吠えた。


「うぐっ……」

 大地を鳴動させる轟音に気圧されるが、何とか確認できたのは、私の雷撃が命中する瞬間に軌道を変え、空へと舞い上がって消えていく姿だった。

「受け流された……というよりは、制御を奪われましたね、これは」

 現状を自認する為に呟けば、柔らかな声が聞こえる。

「巫女として、いかなる神でも受け入れられるという事は、それ即ちいかなる魔力にも順応し、己のものに変えられるという事……なら、このくらいは出来ないとね」

 ……彼女はそう言うが、実際は星華せいかさんですら容易ではないのだ……あの人が用いる陰陽五行において、雷は木気に分類されている為、雷であればあの人は用意に捌いてしまう……だが私の武器は魔力を利用しているが内部では科学的な電磁誘導を基にして発電している為、微妙にその法則から外れている……それを容易く支配下に置き、制御してしまうというのは……

「……なるほど、狐が故にですか」

 苦笑いの籠った私のちょっとした皮肉に、その尻尾がはらりと揺れる。

「まあね、私は所詮、星華ちゃんに保護された、虎の威を借る狐……でもそれで良いの、それが他の誰かの力であったとしても、それを取り込んで自分の力に変えれるなら……それは私自身の力だから」

 その通りだ、何も間違った事では無い、相手の攻撃が己に届く前にそれを己のものへと変えてしまう、それは彼女の実力以外の何物でもない。


 何を思ったのか、おもむろに、彼女は氷柱を作り出し、自身の腕を軽く切った。

 その傷口は最初の血が地面に零れるよりも早く凍結し、数秒後その覆った氷が砕けるともうそこに傷跡は残っていない。

「……不死と言う訳じゃ無い筈なんだけど、単純な巨体と合わせてこれはちょっとずるいかな……星華ちゃん相手ならこれでも足りないとは思うけど」

 そう言って彼女は人型へと変異した、


「……随分と優しいのですね」

 少々呆れながらそう言うと、彼女はいつもと変わらぬように笑った。

「近い実力の相手に対して、体の大きさと質量ってのは圧倒的な差になっちゃうからね……そもそもの実力差が圧倒的な星華ちゃんが本気で殺す気なら、一瞬で首を刎ねられそうだけど……」

 相変わらず彼女の強さの源泉に居るあの人の影に苦笑しつつも、手に持った大釘を構えなおす。

「それでも、まだ戦いを止めはしないのでしょう?」

 私の言葉を聞いた彼女は思い出したように、腰に下げていた脇差しを抜き放つ。

「そうだね、あの姿じゃあ星華ちゃんに教えて貰った技術の半分も生かせないしね……」

 憧憬と誇り……その思いが強く感じ取れるその言葉にそっと頷く。

 そして2つの武器が刹那に触れ合い、火花を散らした。

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