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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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243話 夜の闇5

 静かな執務室、その窓が一人でに開き、外の冷たい外気と共に一つの影が飛び込んでくる。

とよさん、ここは二階ですよ……出来れば正面の扉から入ってください、敵かと思います」

 呆れた私がそう呼びかければ彼女はゆっくりと起き上がり、口を開く。

「この部屋、廊下の突き当りにあって、玄関からだとちょっと面倒な距離歩かされるじゃん」

「それで……報告ですか」

 彼女が外に出ていた理由、それは最近この国で起きている連続失踪事件の調査だ。その内容は決まって夜、基本的にある程度若い人が一人夜道を歩いていた所を狙われたと考えられているが、一切の情報が無く、停滞していたのだが……状況が一変した。

 被害者全員が死体で発見されたのだ、住居街の片隅にごみのように積み重ねられ、捨てられていた……そしてその死体には心臓と全身の血管が存在しなかった、胸には穴が開いていたが、血管は未知の方法で摘出されたようで、胸以外の外傷が無い状態のまま血管が消滅していた。

 こんな死体を作れるのは高度な医療技術による施術か、異形の力しかないであろうと結論付け、豊さんがその調査を行っていたわけだ。


「うん、報告だけど、子供達に聞いてみたら妙に具体的なお化けを見たって、話してくれてね……調べてみたら多分それが実行犯だと思う」

「子供達……ですか」

 私の呟きに混じった不信感を感じ取ったように彼女は肩をすくめる。

「異形が相手だと、現実では信じれないような物を見る可能性があるからね、それを夢と思い込もうとする大人よりも、お化けと思う子供の方が奇天烈な情報が集まる事が多いんだ」

 そういうものなのだろう、それで結果が得られたのなら問題はない。


「それで情報というのは」

「子供達が言うには、真っ白な天使が大人を連れ去って居るって言ってたんだ」

 天使と言う言葉に嫌な予感がする、まさか残党が何かをしているのだろうか。

「それで詳しく聞いてみるとね、翼だけじゃなくて、肌、服、髪、果ては持っている剣まで全部真っ白って言うから変に思って、実際にさらわれたと思われる場所を探してたら……こんなものを見つけた」

 そう言って豊さんは、懐から取り出した白い塊をゴトッと机の上に置いた。

「これは……石、でしょうか」

「ちょっと削って調べてみたけど、多分結晶質石灰石……つまり大理石だと思う」

 その塊を手に取って眺めて見るが、一部磨かれている以外に特別な所は……いや、磨かれているのか。


 そう考えていると豊さんが言葉を続ける。

「予想なんだけどね、多分今回人を攫っているのは彫刻だと思う」

 子供達が語ったという白い天使、これがその破片と考えれば納得は行く……だが何のためにそんなことを……

 その疑問に対しても彼女は一つ答えを持っていた。

星華せいかちゃんの記録にあった特徴なんだけどね……人間の心臓や血管を抜き取るのは、吸血鬼系か、何か人形とかの動力にしていることが多いって書いてあった」

「つまり攫われた人々の心臓は……」

「うん、多分攫っている彫像とは、別の彫像の動力になっているんだと思う、攫われる頻度がある程度一定なのも大理石の塊から彫り出すのにかかる時間だと考えるなら納得がいく」

 ……とんでもなく危険な相手だ、本人は巣に籠ったまま被害を出し続け、手駒を増やしていくのだから。

「下位の存在を生み出す能力……星華ちゃんの記録にもそれなりに出てくる、下僕製造型の異形存在……多分それが今回の事件の犯人だと予想できる」


 だとすると解決は厄介だ、本人が出向いて来ないのだから、彫像を一つ壊しても、他の彫像がより巧妙に動き始めるだろう。

「これは……どうすれば」

「私に作戦がある」

 そう言った豊さんの顔を見る、彼女は静かに窓から街を見下ろしていた。

「彫像に攫われる、そうすれば頼まなくても相手の拠点に案内してくれるから」

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