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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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237話 夜の闇3

 鉄の巨人が剣の切っ先を向ける、それに対して私達はゆっくりとそれぞれの武器を構えた。

 熱気が空間に満ち、とよさんの保護なしでは一瞬で干物にされてしまいそうだ。

「戦い……戦う……終わりは……ない……」

 酷くざらついた声だ、喋ってはいるが、それが僅かに残った理性なのか、最後に抱えていた思いなのかは分からない。

 何のために戦っていたのか、それを見失ったなれの果てなのだろう、目的地もそこに向かうための道もなく、ただ目の前の敵に剣を向けるだけなのだから。

 後悔、恐怖、絶望、その渦中に人が縋る思い、願い、それが形となるのだろうとあの人は記していた、だからこそ目的と手段が入れ替わるのだろう……手段が足りぬからこそ目的を叶えられなかったのだから。

 ……止めなくては。


 踏み出し、両手に握った大きな釘で横に薙ぎ払う。

 鋭く尖ったその先端は、その体を抉る事無く鎧に阻まれ、止まる。

「危ない」

 私に向けて振り下ろされた燃え盛る剣を、割って入った豊さんが受け止める。

「はっ」

 受け止めた巨大な刃を一息で返すと素早い剣戟でその鎧を切り裂き、直ぐに後ろに飛びのいた。

天音あまねちゃん、あれ鎧に見えるけど実際は外殻みたいなものだから、魔力を纏った状態の武器じゃないと貫けない」

「了解しました」

 観察してみれば豊さんが鎧に付けたはずの傷は無く、再生していることが分かる……魔力による再構成、つまりは再生できなくなるまで攻撃を続けるか、再生できない程の損傷を追わせれば、魔力で構築されている肉体が崩壊して鎮圧出来るという事だろう。

 ずっしりとした重みをもつ釘に魔力を流し帯電させる、落雷ならともかく、ただの電流では通じないのだろうが、魔力で生成した電力なら効果があるだろう。


 今度は鋭く、突き出せば今度は危険を察知したのか防がれる……ただ剣で防いでるだけなのに、とんでもない重いさだ、豊さんはよくこれを返したものだ。

 私にこれを力で返す腕力は無い、だが向こうが力を抜けば一気に押し返せるよう力を籠め、呼びかける。

「豊さん、今です」

「分かってる」

 冷気を纏った脇差しがその胸へと突き刺さる、そしてそれに反応して剣をずらした瞬間私の釘が雷を纏って首元を貫いた。

 そしてそのまま豊さんは脇差しを胸から右腰にかけて切り降ろし、私は左肩に向けて武器を薙ぎ払った。

 豊さんが切り裂いた部分は氷が昇華して水蒸気爆発を起こしたのか小さな炸裂が起き、私の釘は左腕を切り落とし、傷口を雷で損傷させていた。

 燃え盛る鋼の巨人はそれでもなお動こうとし……そしてゆっくりと鎧が崩壊し、最後には肉体そのものも塵となって崩れていき、その中には気絶した老人が倒れていた。

「豊さん、お願いします」

「うん、とりあえず熱気を追い払う」

 彼女は術式を使って周囲の熱気を吹き飛ばし、老人に近寄ると、手をかざして何かをしている。

「それは何をしているのですか」

「私の魔力を少し分けてる、魔力が完全に枯渇している以外に問題は無いから少ししたら目が覚めるはず」

 そう言って彼女は荷物の中から水筒を取り出して中を確認する。

「うん、流石星華ちゃんの魔道具、中身は冷えたままだね、天音ちゃんも飲んで」

 渡された水筒に口を付け、一息つく、一瞬で片付いたが、逆を言えばそうしなければ危なかった、冷気の守りを貫く熱気は体力を奪うし、向こうから全力で攻撃されていれば武器が壊れていてもおかしくない。


 倒れた老人を見て目を閉じる……問題はここからだ、この老人が再び道を見失い、暴走する事が無いようにしなければ。

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