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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
14章 訪れた夜
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236話 夜の闇2

「ここにある魔物死体の足には合わない大きな足跡。刃物で切断されているにもかかわらず、切り口が焼け焦げた細い木の切り株……多分これかな」

 既に何処かへ移動している異形を探し、とよさんは現場に残された痕跡を探っている。

「足跡の大きさから概算するに、身長は八尺から十尺……2.4メートルから3メートルくらいかな、星華せいかちゃんの記録に書かれた巨人型の異形に比べればまだ小さい方ではあるけど、脅威じゃないとは言えないね」

 無言で頷き、私もかがんで魔物の死体を調べる……時間が経過している以上判別のつかない物も多いが、殆どが一撃で始末されており、余計な追撃をされた形跡は少ない、そしてその傷口は完全に炭化しており、かなりの熱量であったことがわかる。

「豊さん、貴女の渡した武器はここまでの火力があったのですか」

 そう尋ねれば豊さんもその死体を軽く調べて首を振る。

「金属を焼き切れるとは言っても、銅や錫は溶けやすいし、実際には熱で柔らかくしながら重量で叩き切ってる武器だったね……数秒かけて焼き続ければこのくらいには炭化すると思うけど、どう見ても一瞬で切り伏せてる状態でここまでの火力を出すのは……術式を完全に理解してる星華ちゃんならともかく普通は出来ない筈だよ」

「つまり……」

「うん、間違いなく異形化したことで武器も変化してる、身長が伸びてるから剣も大きくないとまともに使えない筈だしね」

 異形によってどのような変化が起こるかは千差万別らしく、それまで持っていた武器と共に変化する事や、特定の木や建物などと融合する事もあるらしい……主に負の感情が元になっているとはいえ、強い願いのようなものが影響する為、その思いの対象などによって差異が生じるらしい。


「多分こっち、付いてきて」

 先導する豊さんにの後を追って山道を歩けば、次第に気温が少しずつ上がって行くのが分かる。

「流石に対策なしに近づくのは無理そうだね、ちょっと待って」

 そう言った彼女が目を閉じて少し集中していると、私達の周りの気温が一気に下がり、今度は凍えそうになる。

「解除しない限り半日は続く、今は寒いけど必要になる筈」

 それに頷き、先に進む。


 周囲の熱気が頂点に達した時、それが現れた。

 3m近い巨大な体躯、それを覆う鎧は熱を放ち赤く輝いている、地面に突き立てられた黒く巨大な剣は今は熱を放っておらず、顔がある筈の場所は兜のようなもので覆われ、その奥では青白い炎が揺らめいている。

「これが……人間なのか」

 私の言葉が聞こえたのか、それはこちらを見つめ……そして剣を引き抜き私に向ける、火を噴き出したその切っ先は敵対していることを教えてくれた。

天音あまねちゃん、色々思う所はあると思うけど、とりあえず鎮圧するよ」

 そういって豊さんは脇差を抜く、彼女の扱える冷気がどの程度有効かは未知数だが、それは私も同じことだ。

「分かって居ます、あの姿は魔力が物理的に顕現した形であり、鎮圧しても余程の事が無い限り本体に被害が行くことは無い……ですよね」

 そこは何度も確認した、救うために殺しては意味がないのだから。

 武器である大きな釘を握り直し、構える、加減できる相手ではないのは承知の上だ。

 そして足を踏み出す、必要なのは一つ、人間に被害が及ばぬよう、早急に鎮圧する事だ。

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