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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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232話 逢魔ヶ時9

 私の為に用意された部屋で少し休んで居ると、扉が叩かれ、開かれる。

「何の用かな、今日はもう休むつもりだったのだけど」

「申し訳ない、其方に同室で生活する世話係を付けることにした、部屋の外を自由に出歩く権限を其方に渡す訳にはいかないのでな、必要な物があれば言いつけて欲しい」

 そう言って天使長は一人の少女を部屋に入れる。

「……見た所天使では無い様だな、翼も光輪も無ければ気配も感じない」

「ああ、天使では無い、ここに居る理由を知らせる事は出来ない故、気にしないでくれるとありがたい」

「まぁ、いいよ、大体分かるしね……彼女の素性も、何故彼女が選ばれたのかも」

 素性はこの際気にする必要は無いだろう、重要な事であったとしても私にとってはさして意味のない事だから。

 問題はこの子が世話係として配属された理由だ。

「さしずめ、監視役、もっと言えば情報を得れれば御の字と言った所か」

「……断るか」

 天使長の言葉に私は笑って首を振る。

「いや、受け入れるよ、居れば便利な事には違いないし、追い返してはこの子が可哀想だ」

「そうか、では私は戻らせてもらう」

 そう言って彼は部屋を出ていき、私と少女だけが残された。


「えっと、何をすればよろしいでしょうか」

 少女が尋ねる、胸の辺りまで伸びた綺麗な黒髪、黒い瞳、透き通るような白い肌は、まさに白雪姫のようであった。

 歳は童顔なとよよりも更に幼い印象で14か15と言った所だろう。

「そうだね、名前を教えて貰おうかな」

「はい、ルナと申します」

「なるほど、いい名前だね」

「ありがとうございます」

 どうやら命令を待っているようだ。

「一応聞くけど、一緒の部屋で生活する事になってるんだよね」

「はい、そうです」

「それなら、もっと気楽にしてていいからね、一日中気を張っているのも疲れるだろうし」

「えっと、でも……」

 そういう彼女の表情から何かを気にしていると推察する……大方天使の指示だろう。

「だったら命令、もっと気楽にしなさい、私だって一日中横で誰かが気を張って居たら疲れるからね」

「はい、分かりました」

 言葉遣いに関しては……まあいいか、少なくとも外見上は私の方が年上だし、無理に砕けた口調を使うとそのほうが気を使わせそうだ、過剰なら直す程度で十分だろう。


「さて、この部屋に寝台は一つしかない訳だけど……何か言われてないかな」

 ルナにそう尋ねると、少し顔を赤くして答える。

「えっと……その、貴女は……」

「うん、なんとなく分かった、言っとくけど、私は本気で嫌がってる相手にそんなことしないからね」

 もしその相手が敵なら話は別だが、彼女は別に敵と言う訳ではない。

「私は……大丈夫ですよ」

「何が大丈夫なのかは聞かないけど、一応恋人を数年は放置するってのに、もう浮気に走るってのは流石にしないからね」

「その、ベットをもう一つ貰えるように伝えましょうか」

 そう言われて部屋を見回す。

「……まあ、そこまでする必要は無いかな、この部屋にもう一つ寝台を置いたら生活する空間が無くなりそうだ」

 そこそこの広さとはいえども、流石にそこまで広くはない。


「さてと、まあそれは良いとしよう……何か私に出来る事で君に興味のある事はあるかな、料理、裁縫、鍛冶、工作、魔術や魔道具でも教えれるよ」

 どうせ暇なのだ、彼女への礼にそれくらいの事をしてもいいだろう。

「それなら……外の話が聞きたいです」

 そう言われて考える、本来あまり語るべきでない話も多く知っているからだ。

「きっと知らないほうが良かったと思える話も沢山ある、それでもいいかい」

「はい、それでも私はもっと外の事が知りたいんです」

「そうか、時間ならそれこそ幾らでもある、ゆっくり話していくとしようか」

 ならば語るとしよう、私の見て来たことを虚飾なく。


 私はベットに転がり、ルナを招き入れる。

「では語るとしよう、私がこの世界に来る前……と言ってもここは天界だから、実際にはこの世界に来る前の世界の、そのまた前の世界の事から」

 そうして私は彼女に語り始める、その世界では禁忌とされ、人々が知るべきでないとされた夜の世界の物語、御伽噺の如き、御話を。

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