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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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226話 逢魔ヶ時6

 一体の天使に飛び掛かり、何も持たない左手を胸に突き刺し心臓を握りつぶす。その間攻撃を右手の匕首で受け止め、武器毎叩き壊す。

 ……周囲の状況を把握し、その中から脅威を選別し、優先順位の高い物から応戦する……戦闘の基本だ、だが、極限まで磨き上げた基本こそ技量であり、それを怠ればその先が身に付くことは無い……それは教育の基本だ、私はとよにそれを教え、技量を与えた、敵の動きを見切り対処する術を。

 だが、それは私の技ではない、私が見切るのは気配、そして予備動作だ、魔術であれ物理攻撃であれ何らかの予備動作無しに使えはしない、ならばそれを見切れば対処できないという事はない……私の体力が持つ限りは。


「不運なものだね、アンタ達は、この邪神だけじゃなくて、あんな化け物を敵に回すなんてさ」

 アザトースは目を閉じたまま空中に浮いていて、周囲を飛び回る無数の賽子さいころは周囲に様々な攻撃魔法を打ち出し、自らが炎を纏って敵に突撃している。

「手心でも考えているのか?」

「まさか、私は邪神だ、面白いほうの見方をするだけさ……天使共、アンタ達の考えている事はつまらない訳じゃ無いが……今はコイツの方が面白い、なんたって私すら利用しようと言うのだからね」

「……全く、別の神格と混ざって居るのではないのか」

 アザトースは私の言葉に、ただ笑い、大仰に口を開く。

「神は人の思う侭に在る、我を良く識らぬ者には、ただ我は()()()()()()()の邪神であるのだから、我もまたそうである事が出来るのだよ……こんな風にな」

 そうして手を軽く掲げると、近くの天使の装備が朽ち果て、その肉体すらも崩壊を始める。

「クァチル・ウタウス……塵を踏み歩く者……そんなもの良く知らない者は名前すら知らないだろうに」

「ああ、だが、クトゥルフ神話の中に語られている事には違いない、ならば呼び出せる……故に、我は無貌でもあれるなら、呼び声を発し、生ける炎としての姿を見せ、黄衣を纏う事も出来よう……我はアザトースであるが間違いでもある、そう我は()()()()()()()()()であるのだから」


「……面倒なものだ、神話そのものとはな」

「ああ、だけど、今はこの力は使わないでおこう、所詮遊びだ、楽しむべきだろう」

 ……制御出来るとは思ってない、それで十分だろう。

「私はただ進むのみ、それが終わる時まで」

 匕首を携え、切り結ぶ。

 突き、払い、薙ぎ、潰し、破壊する。

 アザトースは背後から援護を行い、そちらへ向かった天使を容易く叩き落す。

 ……やがて、増援も途絶え、一人の天使だけが残った。


「貴様で最後だ、天使長」

 敢えて攻撃をせず、最後まで残していたのには意味がある。

「そのようだな、2対1か」

「そうではない、アザトースは帰ると良い」

 私の言葉に背後から面白そうな声が聞こえる。

「良いのかい、確かに私は早くアンタのくれたTRPGの台本を確認したいけどさ」

「構わない、アンタを呼んだのは雑魚の掃除が目的だ」

 ここでアザトースが居てはいけない理由がある。

「そうかい、じゃあ、また会う事になるだろうね」

 気配が消える、見ては居るだろうがそれ以上介入はしてこない筈だ。


「さあ、始めようか、天使の長……神の使徒よ」

「ああ、行くとしよう」

 この戦いで私は負けねばならない、これに勝利し人の世に戻れば、私は英雄となるだろう……だが、そうなれば人は私に頼り、己の足で進みはしないだろう。……故に私は敗北しなければならない。

 私は匕首を構え、足を踏み出す……天使は地に降り立ち、執行者の剣をこちらに向ける。

 さあ始めるとしよう、負け戦を。

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