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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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222話 逢魔ヶ時4

 匕首を右手に前へと足を踏み出す、乾いた靴音が響き渡り、緊張に満たされた静寂が訪れる。

 私は足を止め、言葉を紡ぐ、自分を嘗ての、殺戮者であった時を呼び覚ます言葉を。

「死にゆく者へ、許される限りの、哀悼を」

 そして地を蹴り宙へと舞った。


「総員、耐え抜け、動きを止めろ!」

 天使は私の攻撃を防ぐために動くが、もうそれが出来る時は過ぎ去っている。

 天使の一人の頸に刃を流しながら、その体を足場に更なる跳躍を行い、敵の陣形の背後へと降り立ち、突撃する。

 決死の防御は意味をなさず、数十体の天使が致命傷を負い、地面へと叩き落とされる。

「深淵の扉よ」

 そして崩れた陣形の中央に空間の歪みを作り出し、アザトースの領域へと繋げれば、無数の触手が湧き出し、瀕死の天使を異界へと引きずり込む。


「どうした、反撃はしないのか?」

 突撃したまま駆け抜け、壁際へ移動した私は振り返って無情に言い放つ、敵にこれ以上の同情は無い、慈悲は尽き果て、これ以上捧げる哀悼は無いのだから。

「……返事は無いか、哀れなものだな、門を開けば私一人どうにかなるとでも思っていたのだろう……私の強さの秘密を何かしらの魔術による奇術に過ぎないと仮定して」

 確かに周囲を誤魔化すような幻術を使えない訳でもないし、それで強さを誤魔化す事は出来る……だが、それは見破られれば効果を失うものでしかない、だが私のそれは違う、本来の力を引き出すために魔術は使っているものの、その本質は肉体的な能力と技能に由来するものだ……肉体の内に干渉する魔術を妨害する事は不可能に近い上、極め抜いた基礎性能は下手な搦め手よりも遥かに厄介なものだ。

「では行こう、全てを壊してやる」

 そして私は再び攻撃を開始する。


 私は一つの幻術を使用する、それは私が動いた直後の一瞬だけ、それを認識できなくするというものだった。

 単純ゆえに効果は短く、動き続けている間は再度効果を発動できない物だが、解除は難しく、分かっても対処は難しい……とはいえ、ほんの瞬きする程の時間にすぎない為、効果は殆どない、只人にとっては。

「崩れ去れ」

 その翼を切り裂かれた天使が再び現れた触手に引き込まれていく。

「人よ、懺悔せよ」

 残った天使によって放たれた炎が部屋を埋め尽くす。

「女の髪を焼くとは外道な事をする……まあ防いだがな」

 魔術で障壁を張ったが、左腕は一瞬炎に焼かれ、痛みが走る……邪魔だな、治すか。

 暴食で貯め込んだ力を生命力に変換し、傷を完璧に治療する、そして天使に笑って見せた。


「ふむ、これで私の貯えの()()()()()()消費したな……次はどうする気だ、対策はしたから同じ手は効かんぞ」

 そう言って見せれば、天界への門から次々に増援が現れている……この室内で動ける程度を超えた補充はしないだろうから削り合いになるだろうが、寧ろ望むところだ……上手く押せば勝てる程度に抑えて、上手く戦力を引き出させて潰していくとしよう、私に勝った所で地上を抑えれなくなるかもしれないな。

 私は再び匕首を構える、やる事は決めた後は実行するだけだ。

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