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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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218話 逢魔ヶ時2

「隠せ、響け、惑え、見誤れ、動け、揺らげ、そして留めよ」

 独り廊下を歩みながら周囲に術式の罠を撒き散らす……どれも大した事の無い幻影ではあるが、それで構わなかった、結果は最初から決まっている、それを少し後にするだけなのだから。

 ……私はここで破られる、相手が戦慣れしていないとは言えど、向こうには圧倒的なまでの数が居る。

 どれほど弱い相手であっても、何百と相手すれば疲弊する。

 そうして弱った所を突かれれば、私であっても無事で済む事は無いだろう。

 その先は……処刑か捕縛、処刑ならば死、運よく捕縛されたとて数年は逃げられる事は無い。

 だが、それにかかる時間はどうだろうか、今この場所を覆う結界は自己改良を続けている、三日もあれば神ですら手が届かぬ壁となるだろう……その間だけなら、私はこの結界を破壊させないように戦うくらい可能なのだ。


 人間離れした身体能力、全てを認識しうる知覚、神の座へと届く程の魔力……誰もが羨む能力の行き着く先などこんなものだ。

 ……後悔は無い、有る訳がない、全ては自分で決めたのだから、それは友の為でも、恋人の理想の為でもない。

 それは他ならぬ私の為に……望むものを全てこの手に取れてしまう私が、そしてその手に取れた全てのものに達成感など欠片もない私だからこそ、今ここに居る事が出来る。

 望んでも容易に手に入らぬものが、そこにあるが故に。

 人に自由をもたらすが為に、そしてそれ以上に私が本当の意味で生の感覚を掴む為に、戦おうではないか。


 神の使いである天使の地位が崩壊したことで、人は変化する事になるだろう……それに犠牲が伴う事も承知している、それでも籠から放たれて飛び続ける事が出来ると信じている、少なくとも、私があった者たちにはそれが可能だ。

 神の追放……それによって人が得た自由を何に使うかは私などに分かりはしない、だが、豊が信じたように人が歩まず、その本性が穢れたものであったとしたら、その時は…………私が試練とならねばならぬのだろう、それが天使の行為と同じと知れども、私は人に問わねばなるまい、「お前達人間はその程度なのか」と。

 嗚呼……私は生きねばならないのか、どれほど意地汚く、惨めであっても、私がもたらしたものの行く末を見定める為に、そして愛する人が待つが故に。

 生き抜いてやろう、その結果、本物の逢魔ヶ時の魔物と化そうとも……どこまでも戦い、そして破れてもなお、死ぬことだけは避けよう。

 ……誰よりも人を信じれぬ私自身の為に、それが間違いだと知る為に。

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