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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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214話 天軍を統べる者25

 夜が明ける、既に皆目覚めていて、出発の準備は整っている。

 ……今から動けば、明日の日の入り前に目的の聖神国に着く事だろう。

星華せいかさん、到着予定時刻を日の入りの少し前にしているのは何故ですか?」

「ああ、夜であれば私に分け与えられた神格を用いて、国に居る全ての人間を眠らせる事が出来る……そうすれば、人間に知られる事無く、あの国の中央に行くことが出来る」

「なるほど、それは天使から見れば、知られる事無く()()する良い機会でしょうね」

「そうだ、もしそれでも私達を受け入れるのであれば、許し合う未来もあるのだが……まあ、そんなことは最早あり得ぬ夢なのだろうな」

 だが、それでも尚、最後まで敵対しない道は作っておくのは、神に対する小さな慈悲と、その後の歴史に綴られる我々の正当性の為だ。


「何、狐と狸の化かし合いと、その後の戦いについては私に任せておけばいい……天音はこの事を歴史にどう記すべきか考えるんだな」

「それは……この戦いを美談にしろとでも?」

「そこまでは言わないさ、だが、自らが一切傷付く事無く、誰かの力に頼ってこの国の歴史は作られたとなれば、今後あの国に生まれた事を誰もが誇れなくなってしまう事だろう」

 自分がその国に生まれた事を誇れない……それはとても怖い事だ、自らの属する集団への帰属意識が無くなれば、外からの侵略者が現れた時、簡単に裏切り、離反する者が多くあらわれる事だろう。

 それだけではない、国を守るために戦わなくなれば、己の家族すらも守れなくなるのだから。

「それでも貴女の事を完全に無かった事になどできません」

「だろうな、私の暴力で支配者を変える事になるのは誤魔化せないだろう、だが、その後の復興に関しては別だ」

「……国の立て直しを、国民の手によって行い、それによって失った誇りを取り戻させると同時に、後の世代に語り継ぐ話を作る」

「他にも出来る事はあるだろう、それを考えるのは私ではないがな」

 私は所詮夜の狩人、殺し屋なのだから、そんなものが歴史の中心人物であってまともな国が出来るとは思えない。




 三日後の日の入り前、予定より一日遅れて聖神国のすぐ近くへと辿りついた。

「この距離なら、まだ認識されてはいまい」

 私の中にある神の力の欠片へと手を伸ばす……ギリシアの夜の女神ニュクス、その力の断片はかつて私の力を引き出すことに使われた……だが今は、夜そのものが持つ強力な力を行使するために使おう。

 ニュクスは語られる部分は少ない物の、大地ガイアや天空ウラヌスと同じ原初の神、あの国に居るのはほぼ一般人だ、僅かな魔力でも眠りに誘うのは容易い。

「さあ、進もう」


 全ての人間を無力化した後に、軍を進め中心となる巨大な城へと入り、強力な霊力の吹き溜まりとなっている大聖堂へと向かう。

 その扉の前で、振り返り、皆の顔を見る……皆、緊張した面持ちだが、決意に満ち溢れている。

 私は頷くと、扉に向き直り、魔術の力を用いて、ゆっくりと扉を押し開けた。

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