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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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204話 天軍を統べる者16

 魔物による攻撃部隊の撃退が終わり、一晩が経った、何かしらの追撃を予想してはいたが、実際には何もなく、恐らくは様子を見られているのだろう。

 こちらの被害は、二割ほどが死亡し、残りも大部分が負傷しており、戦いを続けられる様子では既にない……部隊の八割が負傷している軍など、最早その役割を果たす事はできないのだから。


「もはや限界です、撤退の指示を出してください」

「それは出来ない、戦争とはどちらかが滅びるまで終わらない物だ、物の道理の分からぬ小娘が口を挟むな」

 天音が撤退を進言しているが、上層部の人間は聞き入れようとしない……その後ろで黙って聞いている私は、その男から天使の持つ魔力と同じものが出ているのを感じるが、それが分かった所で今は役に立たない。

 ……仕方ない、一度限りの不意打ちだが、手を打つとしよう。

「少しいいか?」

 そう言って私は、()()()()()()()机の上に小さな歯車の機械を置く……最初は咎められたが、なんの効果もないと確認されてからは、一切触れられていない。

「何でしょうか、星華せいか様」

「ふむ……そうだな、なんと言おうか」


 わざともったいぶって、間を置き、一瞬警戒が緩んだ瞬間に切り札を打つ。

「昨日の夜に荷物まとめて出て行った、高官の目的が知りたくてな」

 戦いに直接参加しない、文官系統の高官や、全ての天使、教皇なども付いてきていたのだが、それらは皆、昨日の時点で何処かに逃げて行ったのだ。

「それは…………」

「まあ、私たちを生贄に逃げたのだろうがな」

 そう言った所で相手の男がいら立ったように言い放つ。

「貴様らのような屑共の命より、天使様たちと、高官の命が重いのは当然だろう、貴様らなど、ただの武器なのだからな」

「……お前も見捨てられたのか?」

「馬鹿な事を言うな、私は貴様らの管理を仰せつかったのだよ、逃げ出さないようにな」

 そう言い放つ男に、殴りかかろうとする天音あまねの腕を掴んで止め、冷ややかに言い放つ。

「お前がただ見捨てられたのなら、庇いようはあったのだがな、まあ運が悪かったとでも思ってくれ」


 私はゆっくりと、机の上に放置されていた小さな機械を持ち上げ、それに向かって話しかける。

「聞いての通りだ、国は我々を捨てた、ならば、戦う必要はあるまい……なに、帝国の女帝マーガレットは捕虜の扱いにも気を使う人だ、国に帰るのが怖いのなら投降すればいいし、国を守りたいのなら撤退するなり、ここで死ぬのも好きにすれば良い」

 そう、この機械は外に音を伝える魔道具だ、最初の数回は見た目が同じなだけのガラクタで、何も言われなくなってからはこっちの物を、起動していない状態で持ち込んでいた、だからこそ使えるのは一回きりの作戦になる。


 まだ状況がつかめていない天音を連れて、作戦室用テントの外に出ると、既に多くの兵士が集まってきている。

「今の話は本物ですか?」

「君は確か小隊長の一人だったね、ああ、残念だが本物だ」

 私の言葉を聞いて、兵士たちがテントへ突入しようと身構える。

「待て」

「……いけませんか」

「いや、殺すな、奴には証人になってもらう……だから、生きていて口が利ければそれでいい」

「了解しました」

 直ぐに男の悲鳴が聞こえてくるが、それも長くは続かなかった……私が兵士に教えた技術には相手を殺さずに痛めつける技術も多い、死にはしないだろう……最悪死んでも構わないし、気にすることは無い。


「さて、天音、行こうか……そろそろ天軍はあの国から手を引くべきだ」

「はい、休んでいるとよさんが起きたら行きましょう」

「そうだね、じゃあ、準備を始めようか」

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