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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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203話 天軍を統べる者15

 金棒を右肩に担いで、散らばる木箱やテントの残骸を抜けて動く鎧(リビングアーマー)の群れる最前線へと向かう……金棒の重さも相まって、柔らかい地面に足が沈み込み、速足程度の速度しか出ない。

「……邪魔だ」

 私の動きを阻止しようと向かってきた一匹の狼に、足元に落ちていた槍を投げつけ、頭を地面に縫い付ける。

 振り返ると目の前に狼が迫っているが、草が擦れる音で気付いていた私は無慈悲に金棒を振り下ろす……金棒の先端が触れた胴体が抉れて消し飛び、地面で痙攣する狼をこれ以上苦しませないように、呪術で体に残っている生命力の全てを喰い尽くし、終わらせる。

 ……所詮は狼か、素早い身のこなしと、統率された群れによる狩り、爪や牙等は強力だが、異常な耐久性を見せる訳でもないし、広範囲を一度に攻撃できるわけでもない……狼以上の猛獣を身に宿す私の相手ではない。

 それを言ったら、私の所に居る狼のコロは強いな、体躯は普通より遥かに大きく、私の組手の相手が務まる程の身体能力もある……それと多分だが私の魔力が濃い場所に居た影響で、魔力も宿しているから、その気になれば魔法も使えかねない……狼ってなんだろう。


 そんなことを考えながら、リビングアーマーの破壊を開始する。

 金属鎧に、金棒を縦に振り下ろすと、中が空洞であるが故の反響音を一瞬鳴らして、反響が鳴りやむ間もなく潰れて動かなくなる。

 横に振るえば、剣を構えて受け止めようとするが、その剣をへし折り、そのまま本体の鎧を打ち砕く。

 少し離れた所で戦う天音あまねを見れば、巨大な釘を振るい、鎧を砕き、貫き、切り裂き、高圧放電で焼きつぶしている。


 潰しても潰しても終わりが知れないリビングアーマーの群れに、苛立ちを覚え、周囲に天音以外が居ない事を確認したうえで、天音に声をかける。

「天音、離れて居ろ」

 私の能力の全てを用いて周囲の状況を把握し、魔力をかき集める。

「門よ……開け」

 私の言葉に呼応して現れた無数の魔法陣の一つに棍棒を構えて走り込む、後は狂気の(まま)に金棒を振るい、近くの全てを破壊し尽くす。

 戦場に出現した私専用の転移陣、それによって戦場を端から端まで縦横無尽に駆け回り、反応すらできない敵を唯々(ただただ)蹂躙していく。

 結局三十秒と立たない内に、そこにいたリビングアーマーは全て破壊された。


「……星華せいかさん、これは……」

「私の本気だ、転移陣をあらかじめ配置していれば、後はすれ違いざまに攻撃すればいい……運良く避けても最終的には当たるように陣は配置してある」

 広い戦場では、周囲の障害物、敵の位置を一瞬で把握できなければ使えないが、建物内であれば、廊下の端から端までを繋ぐという手もある。

 ……最大の欠点は、魔法で身体能力を底上げして突っ込むと、敵味方を判断する時間が無いから、味方が居無い状況で使わないと、巻き込む事故が発生する点だろう。


 本陣の方を見れば、狼は既に片付いている……豊を中心とした弓兵部隊を、騎士が守りを固めることで防衛力と殲滅力を高めたようだ。

 ……途中までは感じていた強力な魔物の気配はすでにない、恐らく司令官系統の存在で、失いたくない存在だったのだろう……逆に攻め込んできていたのは、ほぼ召喚したばかりの魔物で、減っても補充が利く戦力なのだろう。


 ……まあ、一応終息したので、金棒を転移術で私のダンジョンに送り、本陣へと戻る。

 ……これで撤退を選択してくれるといいのだが。

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