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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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198話 天軍を統べる者10

 軍が半日ほど進んだところで、左右が崖になっている道に差し掛かり、私が斥候に任命された……私は防衛線にしか参加しないからと、断っても良かったのだが、ここで罠に掛けられて敗走したのでは、向こうに私が残してきた結界の威力を天軍に伝えられなくなってしまう。

 あっちの国に残した設計図に、最優先で作るべきだと書いておいたので既に完成していることだろう……あれの脅威を天軍にしっかり理解させて、次の行軍を行うのを躊躇させる必要があるからね。

 ……まあ、聖神国が、この行軍で勝利を掴むことは出来ないだろう。あの結界はそういう風に作ったし……そもそも、私ですら突破できない代物なのだから。

 その結界があれば、普通は準備が整い、敵が度重なる行軍で疲弊するまで、軍を出さないのが普通だろうが、マーガレットの事だ、何かしら仕込んでいるだろうし、天音あまねを殺す事が目的である、うつほが独断で動かないとも限らない。



「……二人とも、止まりなさい」


 後ろを付いてきていた天音ととよに声をかける。


「なにかありましたか?」

「ああ」


 私は軍から借りてきた弓を持ち、火矢を番えて、地面の一点に放つ。

 矢が着弾した瞬間、爆音と閃光が周囲を満たす。

 私は危険を訴える獣の本能を抑え込み、ナイフを抜いて天音の首元へと素早く振るう。

 そしてそのナイフは、私の読み通り、金属同士がぶつかった高い音を響かせ、天音に投げられたナイフを叩き落す。


「……え?」

「豊、撃って!」

「了解」


 状況を理解できていない天音を尻目に、私の指示を受けた豊がその弓を放つ。

 まだ完全に戻っていない聴覚が、僅かな悲鳴を捉え、逃げていく気配を感じた。


「……何が起きたのですか?」

「空が居た、想定通りに撃退した、それだけ」

星華せいかちゃんから、先に指示を受けてたの、空さんが居たらどうするかって」

「そうですか……命を救われましたね、感謝します」

「その感謝は命を救われた事より、まだ人を救えるという意思から来るのだろうね」

「その通りです、私は……贖罪をしなければならないのですから」


 異常なほどに人を救う事を求める天音の、その本当の理由、それが贖罪だ……問題のある新興宗教の教祖の娘として生まれ、人の為と教えられて犯罪に手を染めて来た過去を持ち。その新興宗教が壊され、自分のしてきた罪を理解した彼女に残った、たった一つの願い、【可能な限り多くの人を救い、幸福にする】……その多くの人の中に、彼女自身は絶対に入らない、それが彼女の贖罪だ。だから彼女は空に殺されても構わないと思っているだろうし、それで空が救われるなら喜んでそうするだろう……そうしないのは、生きていることで、より多くの人を救うためであり、そして何より、復讐者を果たしても、復讐者はいずれ自分の罪に苦しむことになると知っているからに過ぎない。


「……天音に死なれると困る、私に人々をまとめる技量は無いから」

「解っています、当分は死ぬ気はありませんから」

「それでいい」


 そういうと私は身を翻して、天軍の元へと戻る……爆音の説明と、爆弾処理の為にもう何度か爆発することを報告する為に。

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