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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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194話 天軍を統べる者6

 逃げて行ったとよさんは、簡単に見つかった……ここには一人で考え事を出来るような場所は、数か所しかないので当然なのだが。

 彼女は公園の椅子に座って目を閉じている、私はその隣に腰掛け、彼女が気付くのを待つ。

 やがて眼を開いた彼女は、私を見ると直ぐに口を開く。


天音あまねさん……私は大丈夫だよ」


 その言葉に私は首を横に振って答える。


「とてもそうは見えませんよ、悩みがあるなら言ってください、出来るだけ協力しますから」

「……本当に恥ずかしいだけなんだけどね」


 少なくとも本心の一部であるように聞こえるその言葉に、引っかかりを覚えた。


星華せいかさんの事については特に何も思わないのですか?」

「もちろん、だって星華ちゃんは絶対に、私にとって悪い事はしないから…………それに、私だってその……昔の事はあまり話したくないから……気持ちは分かるし、それに……星華ちゃんは……私に気を使わせたくなかったと思うから」


 彼女の言葉に私はそっと目を逸らす、彼女の過去については知ってはいたが、正直忘れかけていた……彼女自身で既に片付けていると思い込んでいた自分が恥ずかしく思える。


「正直私はね、こうやって人と話している時、心のどこかでずっと考えてるの……どうやったら嫌われないように話せるか、好感を持ってもらえるか、って……素の自分を出したいと思っても、星華ちゃん以外の相手には出来ないの……相手の気に入らない事を言ったり、仕草をしたりしたら、殴られたり、閉じ込められたりするのが当たり前だったから…………」


 彼女の語る話を聞いて、私はここに来る前に星華さんに言われた事の真意を悟った。

 星華さんは、この世界の戦乱が、元の世界でも日常であったと言っていた……その言葉は、少々特殊な幼少期を過ごした、私にすらも想像のできないような経験から来るものであり、共感できる人は少ないだろう。

 だが……豊さんにとっては、この世界の方が遥かにマシなのだろう……誰よりも辛い過去を持つがゆえに、あの国の社会を真実を知るがゆえに、こんな争いの絶えない場所ですら楽園に見えるのだろう。


「豊さん……貴女は…………」

「うん、大丈夫、星華ちゃんは、私の事を全部知った上で受け入れてくれるし、私が何をしても怒ったりしないし、殴ったりもしない……たまに甘噛みされるけど、あれは悪気は無いし、別に痛くない……それにこんな私の願いを全力で叶えてくれるし、何より、()()()()()()()()()()……この気持ちが例え狂っているとしても、私は構わない、星華ちゃんが曲がらないんだから、私も曲がらない!」


 そう宣言すると彼女はおもむろに立ち上がる。


「天音さん……ううん、天音ちゃん、星華ちゃんの所に戻るね……色々ごめんね」


 彼女は私の返事も待たずに走って行ってしまった……どうやら迷いは消えたみたいだ……いや、そんなものは最初から無かったのかもしれない、今となってはどうでもいい事だが。

 彼女が心を決めたのだ、なら私も決めざるを得ないだろう……本当に星華さんの目指す未来を正しいと信じるのかを……それも、利益や効用の計算ではなく、一つの信念として。

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