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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
13章 天軍を統べる者
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193話 天軍を統べる者5

「その……ごめんなさい」

「いや、私自身話していなかったことだから、豊が心配するのも無理がないよ」


 悪戯がバレた子供のように誤る豊さんに対して、星華せいかさんは別に気にした様子もなく答えている……後、やはりこの人、豊さんに、対しては口調が優しい、多分意識的なのだろう、この人に無意識の癖があるのかも怪しい。


「……というより、豊はこんな展開は予想してなかったんでしょ?」

「…………」

「図星みたいだけど、一体どんな想像をしていたのか聞かせて頂戴……あと、私でも理解しやすいように分かりやすくね」


 分かりやすく視線を逸らす豊さんに、その心理を読み切っているであろう星華さんは、敢えて、こう言ってるようだ……本当に行間や、言外の意図を読むのが苦手なのかと言いたくなる。


「……天音あまねさんが、星華ちゃんに夜這いに行ったと思ってた」

「今はまだ昼だよ」

「そうだけど、そういう意味じゃない……」

「知ってるよ、いくら慣用句の意味を、文字通りに捉えやすいと言っても、知識がそれを補完してくれるからね」


 豊さんの答えに少々唖然とするが、私の行動を考えると、仕方のない事かもしれない。




「それで聞いてたんでしょ、豊は私に失望した?」

「……なんで?」

「いや、一応隠してた事になるしね……」

「私に余計な気を使わせたくなかったからでしょ、それに星華ちゃんは星華ちゃんでしょ?」

「……そうだね」


 無いだろうとは思っていたが、やはり豊さんが星華さんに幻滅することは無かった……多分星華さんはそれを恐れて言わなかったのだろうが。


「まあ、それにしても、天音が私に夜這いを仕掛けてたら、豊はどうするつもりだったの?」

「え……あ、あはは…………ごめん」


 そういって豊さんは顔を真っ赤にして部屋から飛び出していった。


「あ、逃げちゃった」

「追いかけないのですか?」

「……流石にこの状況で追いかける程、私は無神経じゃない」


 ……まあ、追いかけても豊さんが赤面するだけではあるが……この人は多分、それ以外についても考えさせるつもりなのだろう。


「なら、私が追いかけます……危ないですから」

「そう」


 軽い返事を返す星華さんに背を向け、歩き出す。


「天音」

「何でしょう」


 振り返ると彼女は、真剣な面持ちで私を見ている。


「この世界では毎日のように殺し合いが起きるし、戦争も多い……こんな日常を、この世界に来る以前の生活と比べてどう思う?」

「そうですね……平和とは言えませんが、この世界の方が、自分の使命が分かった気がします」

「そうか……私は、なんとも思わない……というか、何一つこの世界と、前の世界に差を見いだせないんだ…………勿論、技術の進歩などの差異はあるが、闇社会に生きてきた私にとって、こんな事は日常茶飯事に過ぎない」


 ……私は動けなかった、彼女の言葉には、ただの苦しみだけではなく、彼女の誇りや生き様が含まれているように思えたからだ。


「何故、そのような事を?」

「さあね、ほら、追わないのか?」


 そう言われて、私は豊さんが行ったであろう方向に走り出した、彼女の言葉の真意を考えながら。

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