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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
12章 黒い翼
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185話 黒い翼21

 聖神国にある、貸し出された自室に転移で戻ると、丁度(とよ)が部屋に入ってきた。


「あれ、星華せいかちゃん、帰ってたの?」

「ああ、今戻ったところだよ」

「何してたの……デート?」

「そうそう、敵対的なダンジョンという場所でね」

「……ああ、うん」


 豊の突飛な発言もそうだが、私の返しにも、天音あまねは苦笑している。


「まあ、それについては、後でゆっくり話すから、本題に入ろうか」

「うん、分かった」


 天音と豊をベットに腰掛けさせ、私は向かい合う形で椅子に座り、この部屋に対して、外からの監視が出来ないようにする結界を構築する……この結界の効果はアザトースが遊びに来た時に、協力してもらって、十分な効果を確認して居る。


「これから話すのは、私の計画の目的と、その結果起こる良い点と悪い点についてだ……具体的なやることについてはある程度話すが、魔術的な細かい部分などについては、多分まともに理解できないだろうから割愛するよ」


 魔法の概念や、術式の構築などについての高い知識を要する為、話すだけ無駄と判断しただけで、他意はない。




「それじゃあ話そうか……私の計画の主な目的は簡単な事だ、天軍を筆頭とした、生態系を超越した、神と呼ばれるものを全てをこの世界から追放する」

「……星華ちゃん、それってもしかして、アザトースも?」

「ああ、そうだ……もっとも、奴に関しては人間の生活を眺めているのを楽しむことが目的のようだから、見ることぐらいは許すつもりだが、人類に干渉させるつもりはない」


 ろくでもない奴ではあるけど、基本的に自分の思い通りに人間を誘導するタイプではないからな、寧ろ自発的に闇に堕ちていくのを見て笑ってる感じだ……人間の食事も好きなようだから、最悪、食道楽までなら許可することになりそうだ……計画に参加してもらう必要があるからな。


「その為に、この世界の法則である、システムをいじる必要がある」

「……システム、ですか」

「ああ、ダンジョンコアがダンジョンを制御しているように、この世界にも、それを制御するシステムがある……その一部を改変することによって、神に類するものが、この世界に好き勝手に出入りできなくする……そうしないと、どれだけ追い払っても焼け石に水だからな」


 同時に、神を追い出す必要はあるが、それに関しては力でやったり、交渉したりする必要はあるが、今気にすることではない。


「……そのシステムはどこにあるのですか?」

「システムとは、魔力などのエネルギーでできた一つの空間領域だ、だから物理的な方法で行くことは出来ない……パソコンなどのデジタルネットワーク内に入るようなものだ」


 そもそも世界を構成している要素が違う以上、生身で存在できる場所ではない、魂魄だけの状態であれば可能ではあるが、現実的とは言えない。


「星華ちゃん、そんなのどうするの?」

「私が何とかする必要は無い……既にハッキングに成功した奴が居るからな」

「……まさか、あの邪神ですか」

「ああ、アザトースならシステムのハッキングが可能だ……それに、私個人でもある程度は何とか出来る」


 裏切りの心配は無い、天軍に一泡吹かせる事が出来るのだから、協力するだろう……抜け穴を作ることくらいはしそうだが、それは私が後日じっくりと塞げばいい。


 「だけど、問題がある、システムは天軍によって掌握されていると言っていい……正確には、システムにアクセスしやすい場所を、この世界での天界に作り替えているというのが実状だ」


 唯一神ではなく天軍にだ、なんとなくではあるが、天軍の行動は神の意志と言うより、天軍の為に感じることが多い、理由は不明だが、場合によっては、神は無知な傀儡かもしれないな。

 以前に私のダンジョンに攻めてきた、謎の機械人形も、最初は聖神国の物と思っていたが、違うと分かっている、恐らく天軍の道具と思っていいだろう。




「さて、この話は置いておいて、良い点と悪い点については無そうか……天音にはこの点が一番重要だしね」

「はい、お願いします」


 いったんお茶を一口飲んで、口を湿らせてから話し出す。


「良い点に関しては言うまでもないね……この世界から上位者が居なくなる事によって、ただ理不尽なだけの試練という名の疫病や災害、洪水による世界のリセットが行われることは無くなる……その上、神の為の戦いは二度と起こらず、宗教戦争や、人柱などの生贄も当然根絶されると思っていい…………まあ、その成果を出すには、神が居なくなった事を上手く広報しなければいけないけど、その方法については作戦があるから安心していい」

「……良い点については質問はありません、問題は悪い点です」


 あくまで冷静な天音に、私は頷く、良い点が多い分この計画には悪影響も多いのだから。


「悪い点に関しては、良くも悪くも、盲目的に信じれる人を救う存在が居なくなることだ……死後の断罪も、神の裁きも、それらを恐れる事がなくなる以上、暴力によって自分の欲を満たす事に抵抗を感じない人間が増えるのは当然だ」


 神の居る世界では、社会に裁かれなくても、神がいつか自分を裁くと考えることが出来る……それがなくなるという事は、バレなければ、何をしても問題ないと考えるものが出てくるのは世の常だ。


「本人のカリスマ性で国をまとめているマーガレットや、そもそも力で国を治める帝国の混乱は少ないだろうけど、神の威光で人々の不満も欲も抑え込むこの国にとっては、非常に大きな影響があるだろうね」


 宗教国家にとっては、国の存在理由が消滅するのだから仕方ない。




「……こんなものでいいかな?」

「はい、よくわかりました……それに、貴女には些事と無視されそうな問題も、幾つか思いつきます」

「それで……私の計画に協力してくれるかい?」


 私は静かに天音を見る……とっくに考えは纏まっている筈だ、纏まらなければ、気になる点を気が済むまで質問してくるはずなのだから。


「貴女の計画には、人心という面で穴が多いです、非常に強い精神を持つ貴女には、想像も出来ないような事を、民衆というものは簡単に行ってしまいます」

「それじゃあ……」

「ですが、私はメリットがデメリットを上回っていると思います……それに、穴は私が埋めれば良いのです……私は貴女に協力しましょう」


 天音が差し出した手を掴み、握手を交わす……穴埋めを天音がしてくれるならば心強い、こちらも目的達成の為に死力を尽くすとしよう。


「それじゃあ、これからの事について簡単に話し合って行こうか」

「はい」


 だが、お互いに頭を使って疲れたため、話し合う前に少しのお茶休憩を取ることにした。



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