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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
12章 黒い翼
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183話 黒い翼19

 扉を開けた途端に、ナイフが突き出されるが、それが何かを刺し貫くことは無かった……こうなるだろうことは分かって居て、被害の及ばないように、荊の触手を使って引き開けたからだ。


「久しぶりだな、名もなき者」


 名もなき者、と呼んだのには理由がある……彼女は自分の名前を極端に嫌っている、まあ、洋物のゲームにでも出てきそうな名前だから、仕方ないと言える……私だって嫌だ。

 だからこそ、私はその名前で呼ぶことは無い、例え敵だったとしても、本人の努力によって決められない事に関して、罵倒することはしない……多少は努力によって改善できることでも、あまり言う事は無い。


「……今更何しに来た、私から魔法を奪っておいて、まだ奪い足りないのか?」

「ダンジョンコアの回収、ほっとくと君はまた、人間の国に攻め込むだろうからね」

「好きにしろ、そしてもう関わらないでくれ」


 荊で拘束された彼女は、諦めたように言う……だが、流石に不憫である為、用意しているものがある。

 ダンジョンコアを、台座から取り上げ、代わりに、特殊な処理を施した、大き目の魔石を台座に置いた。


「これは、ダンジョンコアの機能を、ほぼ全て使用可能なものだ……ただ、私が遠隔操作で機能を停止させれるように仕込んではあるけどね」

「……それで、私に何をしろと?」

「別に、侵入者以外の人間に手を出さなければ、今まで通りに生活して構わない……手を出したら、機能を止める」


 信用されているとは思ってないが、本当に他意は無い、単に理不尽な事に対する償いのようなものだ。


「ああ、後、魔法の忘却だが、ちゃんと訓練すれば普通に使えるようになる」

「そうなのか」

「忘れただけだからな、覚え直せばまた使えるようになる」




 動かなくなった彼女を置いて、部屋に置いてある家具を調べて、生体への転用実験の記録を含めた、錬金術の研究書を探し出す……このダンジョンに居た、キメラ型のアンデットやボスの作成記録もある。


星華せいかさん、持っていくのですか?」

「いや、記録する」


 慈悲を与えるのではないのかと、言外に訪ねてきた天音あまねに短く返して、私のダンジョンから魔道具を転移させてくる。

 インク瓶と羽ペンの魔道具は、私の指示に従って、数分で、図を含む計四十五枚、全ての記録を模写し終わった。


「この記録は中々興味深いものがある……君にあげた、仮のダンジョンコアはこの記録の対価という事にしておこう」


 そう一方的に告げ、天音に帰るぞ、と伝える。


「解りました、彼女がこれ以上罪のない人間を襲うことは無いと判断します」

「じゃあ帰るよ」


 そういって天音の腕を掴んで、転移を発動した。


 ……それにしても、思わぬ収穫だった、ある程度の再現実験は必要だが、使えそうな情報だ。

 まだ、人間に敵対的なダンジョンはある……人類の保護を名目に、天使に目を付けられない程度に、ダンジョンコアの収集を進めていくとしよう。

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