17話 豊とのダンジョンバトル開始
ダンジョンのシステムに連絡が入り、豊のダンジョンと通信でつながる。
「星華、こっちは終わってるよ、そっちは?」
「当然終わってるわ、最もダンジョンに手をくわえては居ないけど」
「星華らしいね、常に準備は万全にしておく所が特にね」
まあ当然だ、自分の能力を計算に入れて考えては居るがそう簡単には負けることは無い。
大体攻めてくるならうちのダンジョン名物簡単な造りなのになぜか絶対に迷う迷路が一番の難関だろう。
「それで戦い方は私が豊を攻めて豊が守る、そしてどちらかのマスターの撃破、もしくは降参が勝利条件」
「勿論よ、星華が決めたならそれで」
・・・勝つ気あるのかなこいつ、まあどの道仕掛けられた私が戦い方を選ぶのだけど。
「なら決まりね、じゃあさっさと攻略させてもらうよ」
「言っておくけど私のダンジョンは森、その奥に神社があってその中がマスタールームよ」
「これはどうも御親切に」
この情報を貰った所で私にメリットは無い、どうせ見れば分かる事なのだから。
「・・・これが終わったら一緒に稲荷寿司でも食べましょう」
「星華も強気だね、終わった後の事を語るなんて、死亡フラグかな?」
「フラグなんて結局は最初にそれを言った人の結末を真似てるだけ、私はそんなへまはしないわ」
「フフッ、でしょうね」
結局は流行もそんなものだ最初に自分を表現した人を、自己表現が苦手な物が真似ているだけ、似合う似合わないは人によって違うというのに愚かなものだ。
話が逸れた、だがこれ以上話しても意味など無いだろう。
「アザトース、居るんでしょ、出て来い」
「要るけど最後酷くない?もうちょっと敬ってよ」
「一応下に就いてるから従うけど、敬うつもりは無い」
「うわぁ酷い、まあいいけど」
「そろそろ始めようか、ダンジョンバトル」
そういうと豊も微笑む。
「そうね、始めましょう」
「攻め手は星華、守り手が豊、どちらかのダンジョンマスターの撃破か降参までダンジョンバトルは続く、それでいい?」
アザトースの確認に二人とも頷く。
「それじゃあバトル開始!」
その瞬間に二人とも自分のダンジョンのマスタールームに飛ばされた。
さあ、行こうか。
豊のダンジョンの入り口と繋がってる入り口に行くが、敵が入って来てる様子は無い。
まあ私が相手な時点で物量での攻撃は戦力の消耗に過ぎない事は解ってる筈だから、予想通りだ。
豊のダンジョンは本当に森だ、恐らく森の中の神社を中心にある程度の範囲の森がダンジョンとして取り込まれているのだろう、侵入者にそこがダンジョンだと気付かせないダンジョンというべきか。
「そして奇襲が得意・・・か、私に効くとでも?」
急に飛び掛かって来た影を全力で蹴り飛ばす。
「狐、まあこれも想定通り」
稲荷神社の巫女だ、狐がモンスターでも何ら不自然は無い。
勿論対策は取ってある、空のあれだ。
取り出して空中に放り投げたそれは爆散して辺りに粉塵を撒き散らした。
対動物用の香辛料の粉末だ、私が採取して空に送り、作成してもらった。
芥子や山椒、あと唐辛子に似た植物を仕込んである。
熊対策や防犯グッツに使われるこれが鼻の利くイヌ科の狐に効果が無いわけ無い。
予想通り狐たちはのた打ち回り、無力化に成功した。
・・・しまった、これ私にも効く、催涙弾だ。
その場を離れて呼吸を整える、使う場所には注意が必要だね。
その瞬間気配を感じて体をひねるとすぐそばを矢が通り過ぎて行く、お出ましか?
だが飛んで来たのは上空、そんな所に居る訳が無い。
・・・なるほど、マスターは自分のダンジョンに入り込んだ敵の位置が解る、そこに矢を降らせているのか。
曲射など普通は不可能だが豊ならやりかねない、というかやる。
次の矢を避けて思わず舌打ちをする。
また狐軍団に囲まれていた、矢に気を取られすぎていたようだ。
・・・でも矢の飛んで来た方向から居場所は解った。
空の爆弾を取り出して仕込んでおいたライターで点火すると矢が飛んで来た方へ全力でブン投げた。
後は狐の対処だ、持って来てたもう一つを使う。
空に使うなら気を付けろと言われた奴だ。
その爆弾を放つとそれは凄まじい刺激臭を放ちだす。
アンモニアと硫化水素の臭気だどちらも毒性が強く危険な気体でそして臭い。
こんな物を容易に生成する空の能力は計り知れない。
流石は錬爆術師・・・科学の実験で身近な素材からニトログリセリンを作り出しただけある。
取り敢えず狐の無力化には成功した、豊を奴隷にしてもこのダンジョンの管理は任せるつもりだから、こちらの戦力もあまり削りたくない。
動けない狐たちはツタなどで動けないように縛っておいた。
森の植物を切り開きながら煙が登っている方へ進んでいくと矢が飛んで来た。
それを撃ち落として一気に近寄ると半径50メートルぐらいの円形の開けた場所に出た、そしてその中央には稲荷神社がそびえたっていた。
「星華、流石に爆弾は無いよ、撃ち落としたから良かったけど・・・」
「知った事か、さあ始めようか」
「そうだね」
豊は刃のついた弓を構え、矢をつがえて引き絞ると放つ、それと同時に私は突撃した。