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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
12章 黒い翼
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168話 黒い翼4

 私が使っていた部屋に、()()()()()()を放棄し終わり、早々に町の外に向かう……あまり感傷に浸っていると悲しくなるからね。

 門を通り抜けて、町の外に出ると、知った顔がそこにあった。


「……うつほか」

「……ああ」

「何の用だ……と言っても聞くまでもないな」


 空は武器であるガントレットを着け、それに付いた刃を私に向ける。


「ワシが独り身な理由は知ってるよな」

「……」

「ワシの親は宗教に食い殺された……星華せいかが味方しようとしている一神教にな」

「ああ……それがどうした」


 あくまで冷静な私に、空は舌打ちする。


「……だが、星華が豊を見捨てることが出来ないのも知ってるからな、ここで戦う気はない……だが、戦場では本気で潰させてもらうで」

「当然だ……私とて、手を抜くことは出来ない……本気でこないと一瞬で全滅するだろうな」


 生まれつきの病魔から解放された空は、今では、()()()()私に匹敵するほどの身体能力を持っている……おそらく、強い枷を嵌められた状態で常人並みに動けるように成長していたから、枷がなくなった今、枷を相殺していた分の能力が、通常の能力に加算されているのだろう。

 だが……それでもなお、私と正面から戦えば空が負けることは確実だ……半分とはいえ、鬼の血を受け継ぐ私は、かつて()()を行った……常人であれ、人鬼となる切っ掛けとなるその行為を行い、その後も無数の人を殺し続けた私は、最早、血筋だけでは説明がつかないほどの、鬼としての力を持っている。


「星華と戦って勝てるとは思っとらんよ……だが、軍に勝てないとは思わないな」

「そうだね、私個人より、軍の方がましかもね」


 広範囲を殲滅できるほどの魔法を扱える私よりも、有象無象の群れがまだましだろう。




「……そうだ、言い忘れていたことがある……ここから先、天軍との戦いでは()()()を使うな」


 スキルとは何か……魔法なら簡単に説明できる、魔法とは端的に言えば、魔力を用いて、現実をあるべきではない形に歪めることだ……何もない場所から火を起こしたり、常温の水を凍らせたりと、普通では起こらない筈の減少を、現実を歪めることで起こしている……魔力は、そもそもは只の純粋なエネルギーを、魔法の為に取り出したものだ……まあ、私のような魔に属するものは、瘴気という形でその歪める為のエネルギー体を扱えたりするのだが。

 ……まあ、ここまでは分からなくてもいい、本題とはさほど関係ないし。


 では、スキルだ……特定の動きをスキルという形にすれば、その動きを常に完璧に再現できる……それがスキルだ、奥義とかを想像すれば分かりやすいだろうか。

 ここまでだけなら、ただ便利なだけだ……だが、考えてみよう……何度でも同じ動きが再現できるなど、あり得るのだろうか……魔法でも、毎回完璧に同じという事はありえない、そもそも、完全に同じ動きが出来るようになるとしたら、長年の練習の賜物だろう……それが簡単にできてしまう……それは普通では異常なことだ。


 なら何か理由がある筈だと思い調べていたのだが、その理由が少し前に分かった。

 ……天使にはスキルが効かなかった、というか、そもそも発動しなかった。

 ここで一つ仮説が出来た……スキルは唯一神、もしくは天軍がこの世界にもたらしたものでは無いかという事だ。

 そしてそれはおそらく正しい、天使に対しては発動しない事から考えて、おそらくだがその目的も予想できた。


 その目的とは、人間が神に挑もうとするときの保険だ……スキルは強力ゆえに頼りやすい……そしてそれが無効化されるなどとは思ってないから、神に挑んだとしてもそれを使おうとするだろう……そうなれば天軍に負けはない、スキルが発動しない事に動揺した所に刃を突き立てるだけで済むのだから。


「……そう私は結論づけた、完全に正しいとは言えないが、天軍に効かないことは確かだ」

「そうか……相変わらず汚いやり口やな」

「まあ、有効なのは確かだけどね……偽物の切り札を与えておくってのは」


 


 考え込んでしまった空に、二つの便箋を渡す。


「忘れてた、セイとエルの二人に渡しといて」

「ああ、華想院の碧火に頼んどく…………行くんか?」

「もちろん」


 そういって、空を置いて歩き出す……次顔を合わせるときは、おそらく敵としてだろう、だが、手加減するつもりはない……とよを返してもらう条件として、要求されるであろう条件を破ることは出来ないからだ。

 ……だが、条件の裏を突くつもりがないなどという事はない。

 私の目的は絶対に達成する、そのために私は動くだけだ。

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