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星の煌めきしダンジョンで  作者: 酒吞童児
12章 黒い翼
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167話 黒い翼3

 天使が目的を果たし、油断した今こそ()()()を行う時だ。

 目的を達成した瞬間は、最も油断する瞬間でもある……これは人間であれ、天使であれ、そう変わることは無い。

 だからこそ私は、勝利した時ほど冷静になるよう努めている……獣性の強い私には、それが難しいのだけど。


「マーガレット、私は天軍のもとに行く……止めても無駄だとは、分かって居る筈だ」

「そうですね、貴女にとって、最も大切な人を人質に取られたのですから……力ずくで止めるのは、無理ですしね」

「ああ、その通りだ」


 私が自分の意志で離れるのを止めるには、力で従えるしかない……だが、それをする戦力はないし、そもそも()()を使える以上、閉じ込めても無駄だからね。


「ですが、天使はなぜ私ではなく、とよさんに乗り移ったのでしょうか……私に乗り移れば、この国を落とすのは簡単でしょうに」

「ああ、それは乗り移りやすさの差だろうね、豊はそれがしやすい体質なんだ」

「巫女……という職業としてですか?」

「巫女についてはうつほから聞いてるみたいだね……でも、それは順序が逆なんだ、豊は生まれつきの巫女体質で、その身に色んな者を乗り移らせる能力に優れているんだ」


 その能力を活用すれば、異なる世界……例えば私たちが前に居た世界などからでも、神を呼んで憑依させることもできる……多少は才能があったとしても、これを出来るのは、贔屓を抜きにしても豊くらいのものだろう。

 まさに天賦の才なのだが、それは邪なものに憑依されやすいという事でもある。

 以前は豊が祀っている稲荷神社の主神、宇迦之御霊(うかのみたま)神が加護を与えて守っていたらしいが、こっちの世界に来てからは、物理的な距離による問題で加護が弱まっていたようだ……それでも悪霊程度は防げていたが、天使の強引な憑依は流石に防ぎきれなかったのだろう。


「それに……あっちにも守りたい人が居るしね」

「どんな人なんですか?」

「名も知らない人たちのために自分を犠牲にしてばかりの人でね、このままだと天使に消されかねない危うさがあるんだ」


 例え天使に消されようとも、天音あまねは止まらないだろう……それが出来る程器用だったら、私は天音を助ける気にはならないだろう……その必要がないのだから。


「そうですか……でも、出来る限り貴女に攻めてきてほしくないのですけどね」

「まあね、何とか攻勢には参加しないように交渉してみるよ」


 私が侵攻戦に参加しないというのは、要求する価値はある、私が攻撃を行わないのであれば、勝機もあるだろう。



「……名残惜しいけど、話はこの辺で終わりにしようか」

「そうですね……いつまでも終わりそうにありません」


 私はマーガレットに背を向けて進み、扉の前で振り返り、()()の言葉を告げる。


「ああ、私に貸してくれた部屋は片付けといて良いよ……()()()()魔道具の設計図とか()()()いくかもしれないけど、好きに使っていいからね」

「……解りました、私が直接整理しておきます……いつでも帰ってこれるように準備もしておきますよ」

「…………ありがとね」


どうやら真意は伝わったようだ……それじゃあ、聖神国に行く前に、私が個人的にしていた魔道具の研究結果や設計図を、()()()()()()()()()()()()()()()全て、()()()に置き忘れるとしよう。

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